内容説明
黄昏の列車のなかで、ぼくは目を瞠るほど美しい親子と同席になった。妖艶で饒舌な母親と、うまく舌が回らず涙ぐむ娘。だが母親が急にぼくを誘惑しはじめ、逃げようとしたとたん、「いか、か、か、かないで、お願い!」娘が腕にかじりついてきた…。物語に潜む“魔”が筆舌に尽くしがたい余韻を残す表題作をはじめ、世界幻想文学大賞受賞作「友の最良の人間」など全11編を収録。
著者等紹介
浅羽莢子[アサバサヤコ]
東京大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
26
ラスト数ページで「え、そんな話だったの?」という急転直下の思わぬ結末が訪れる「フィドルヘッド氏」「おやおや町」「友の最良の人間」が非常に好み。「手を振る時を」みたいな何も起こらないタイプの作品も割と好きです。2019/04/12
あたびー
25
#日本怪奇幻想読者クラブ 急に放り出される。複数の話のラストでそう思った。いちいち説明しないから自分で考えてね、と言われているようだ。著者初読なのである。実は写真(文庫本のうしろに載っていたうす暗い)を見て、著者の作風をゴシック調であると勘違いしていた。読んでみると年代に即したモダンで軽快な語り口だった。ウィーン在住という事だけれど、この本の中ではほとんどの舞台がアメリカだった。スタイリッシュでユーモアもある。軽い味わいのアイシングの下に重いテーマが隠されていることもある。犬が好きだという事も分かる。2019/11/04
sin
13
キャロルの短編をもっと読みたい。紹介されてすぐの頃はその帯のあおり文句に長編を読んでみたがそれほどの感動は得られず、何冊かが積ん読状態でそれが今年になってこのパニックの手を読んでやられた。2012/03/09
さるる
12
人間、見たくない事や認めたくないことには蓋をして生きているのではないだろうか。鏡に映った日々刻まれていく皺に気付かないふりをするように。ジョナサン・キャロルの物語にはそんな地獄の窯の蓋をあけるはめになった人達が登場する。窯の底に見えたものは様々。真実の自分、見たくない未来、完全だと信じていたものの崩壊・・・悪魔は普通の姿でやってくる。「秋物コレクション」は文章が美しくて心にさざ波をたてる。失うこと。得ること。どちらも哀しく、どちらも喜び。「おやおや町」「去ることを学んで」も恐ろしくて良かった。2014/01/22
gelatin
11
★★★★ 読み返したくなったのに本棚で見つけられず再購入。前に読んだのは7~8年前くらいか。この中の「秋物コレクション」がとにかく良かったのにタイトルを「オータムコレクション」と思い込んでいて探すのに苦労した。短編集としては出来にばらつきがあるけれど、私にとっては「秋物コレクション」があればそれで満足なので点は甘い。他には「フィルドヘッド氏」「おやおや町」なども好き。2017/05/26
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