出版社内容情報
ジャックは大学時代の友人のサイモンから、館にある図書室の蔵書目録の改訂を頼みたいという連絡を受けた。稀覯本に目がないジャックはふたつ返事で引き受ける。だが、館に到着したジャックを迎えたのは、窶れ果てた友人だった。その夜サイモンに見せられた、彼の亡き妻の手記には信じられない出来事が綴られていた。表題作「図書室の怪」を始め4編を収録。ポオの研究家でもある著者が描く、クラシックな香り高い英国怪奇幻想譚。
内容説明
中世史学者のジャックは大学時代の友人から、久々に連絡を受けた。屋敷の図書室の蔵書目録の改訂を任せたいというのだ。稀覯本に目がないジャックは喜んで引き受けるが、屋敷に到着した彼を迎えたのは、やつれはてた友人だった。そこで見せられた友人の亡き妻の手記には、騎士の幽霊を見た体験が書かれていた…。表題作を始め四編を収録。クラシックな香り高い英国怪奇幻想譚。
著者等紹介
クック,マイケル・ドズワース[クック,マイケルドズワース] [Cook,Michael Dodsworth]
英国の作家、在野の研究者。エクセター大学で修士号を、ブリストル大学で博士号を取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
74
古典的な英国怪談集。英国にはレ・ファニュやM・R・ジェイムス以来の怪談の伝統みたいなものがあり、時折現代でも間欠泉のようにそれが噴出するのは面白い。収められている四編全てが斯様な怪談であるが、それぞれ違った趣を持っているのも面白い。圧巻なのはミステリ要素も含まれたゴシックホラーの表題作。古い僧院を改築した館、その図書室を巡る怪異譚なのだけど謎と超自然的要素が良い具合に配合されているのである。他にもブラックウッドを思わせる「グリーンマン」とか最も英国怪談らしい「ゴルゴタの丘」等英国の暗さを思い知らされた。2021/01/12
sin
70
図書室の怪/ミステリー色が強く整合性故に怖さの味わいを阻害している。遺物の探索を理解するには英語でなければパズルが意味を成さないのは翻訳モノの弱点。貴族(今の政治家も)が自らを特権階級とする思い上がりが人にレッテルを貼る。そのような人物との友情が不自然で物語の伏線として浮いて見えるのは致し方ないが出来を減じる訳ではなく八つ墓村を思わせるオチまで良く出来ている。六月二十四日/不条理な道行き。グリーンマン/マッケン的な…。ゴルゴダの丘/聖書に曰く《…主であるわたしは妬む神、父親の咎を子に報い、三代、四代に…》2021/08/06
ケロリーヌ@ベルばら同盟
68
「わが家の図書室が君を待っている」名家の現当主である、大学時代の旧友サイモンに、一族が収集した蔵書目録の改訂を依頼され、古森の懐深く抱かれた豪壮な館を訪れた、中世史学者で愛書家のジャックは、中途半端に改装され、投げ出された図書室に戸惑う。急死したサイモンの妻が遺した素描とメモを見せられ、困惑は更に深まる。歴史と、貪欲な人間の業、闇に葬られた者の怨念が絡み合う迷宮。古書が放つ独特な匂い、過去の闇から滲み出す冷気が、大仰で遠回しで、思わせぶりな文章に、まったりと纏わりつく。ゴシック・ホラーの醍醐味を堪能した。2022/07/08
mocha
63
古典作品へのオマージュ色が強くて、読んでいて時代背景がわからなくなる。ミステリー要素もあるけど幽霊にヒントをもらうのはアリ?表題作よりも短編の「グリーンマン」の方が好み。グリーンマンの彫刻を検索してみたらなかなかに怖いものもあって、怪談が生まれるのもわかる。太古の信仰は得体がしれなくて恐ろしい。2022/07/29
ワッピー
39
初読の作家さん。学友の相続した屋敷で再発見された図書室の調査を依頼された主人公を待ち受けるもの「図書室の怪」、自殺した妻から贈られていた詩集の謎「六月二十四日」、太古の森林の主「グリーンマン」、領地の正統な子孫を待ち受けるもの「ゴルゴタの丘」を収録。「アラバスターの手」と同様、ジェイムズ的な伝統的・高踏的な雰囲気を感じますが、これが初フィクション作品とのこと。共通するのは、主人公が特定の場所に引き寄せられていく恐怖ですが、特に印象的なのは、謎の古書商で入手した詩集と英国鉄道の道具立ての「六月~」でした。⇒2021/07/26