内容説明
わたしは隣人とその娘モーウィン、それに愛犬を伴ってウェールズの丘陵地帯を散策していた。全くの偶然からわたしたちは地底にのみ込まれてしまった。そこで出会った亡霊どもは、異端審問官トルケマーダ、サド候爵、皇帝ネロをはじめ、いずれも生前の残虐行為ゆえに地獄へ堕ちた者であった。鬼才J・C・ポーイスが想像力の翼を羽ばたかせた傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
qoop
5
少女と犬を伴った中年男性の地獄巡り。まるで夢そのものを読んでいるかのような印象。生を謳歌する縁として性幻想を肯定し、生を簒奪する罪障として宗教/科学/快楽に基づく拷問/生体実験を否定する。全編に渡るこの対立はエロスとタナトスの対峙を落とし込んだようにも思えるが、整合性があるようなないような… 文章と観念的な展開とが判り難いせいか、つい矮小化して捉えたくなってしまう。例えば少女の父に対する主人公の反感は、娘を誘惑する上での障害になるからだろうと思えたり… 正直、素直に読むのが難しい作品だった。2017/03/20