出版社内容情報
深き緑の森には妖魔が潜み、美しき魔女が誘惑する地アヴェロワーニュの物語。ゾティーク、ヒュペルボレオスに続くC・A・スミスの絢爛たる怪奇短編集第3弾。
内容説明
彫刻家の暗い情念のこもった怪物像が生気を帯びて恐怖をもたらす「怪物像をつくる者」、修道士たちがなまめかしいウェヌス像の魔力に翻弄される「ウェヌスの発掘」など、緑なす森が広がる神秘の地アヴェロワーニュの年代記に加え、異様な死をとげた作家の日記が明かす、神に背いて禁忌の術を用いた神官の物語「アフォーゴモンの鎖」他、降霊術にまつわる綺譚を併せた18篇を収める。
著者等紹介
大瀧啓裕[オオタキケイスケ]
1952年、大阪市生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
50
18世紀のフランスの架空の地であるアヴェロワーニュを舞台にした幻想怪奇譚。アヴェロワーニュ風浦島伝説な『アゼダラクの聖性』が美しい一方で『シレールの魔女』は「男って馬鹿だね~」と思ってしまいます。『蝦蟇のおばさん』は結構、えげつないのですが蝦蟇達が健気で可愛く、見えてくる不思議。『魔術師の帰還』は『闇の中の囁き』と『壁の中の鼠』、さらにはネクロミコンが入っていて完全にクゥトールフ神話体系じゃないか!そして特に抜きんでているのは『分裂症の造物主』。皮肉に満ちながらも真理なラストが凄いです。2014/04/29
sin
35
1986年『イルーニュの巨人』数十年前に出会ったクラク・シュトン。舞台は超古代やらの魔術師の話が記憶にあるが、中世フランスを扱ったもので“ジェヴォーダンの獣”っぽいやつが単純だが興味深かったのを覚えている。今回はまるっとその時代!なんとも大好きな世界観であります。2012/01/04
HANA
16
前二作が完全な架空の世界を舞台としていたのに対して、今回は中世フランスがモデル。そのためどの作品も民話や伝説の様に感じられる。全体的に ファム・ファタルに誘惑される作品が多いのだが、その場合ラストは破滅ではなくハッピーエンドになっているのも特徴。『降霊術綺譚』の方はどれも例外なくラヴクラフトを思い起こさせるものばかりで、どちらかというとこちらの方が気に入った。2012/01/16
ハルバル
10
フランスの架空の土地アヴェロワーニュ(中部オーヴェルニュがモデルか)の中世~近世にかけてのゴシックロマン風物語。雰囲気はともかく話としてはしょうもないものが多く、特に「ウェヌスの発掘」「シレールの魔女」「物語の結末」はたとえ魔物だろうと美女に弱い男の悲しい性が…(笑)「シレールの~」は「それでいいのか!?おまえ飽きられたら狼男にされるんだぞ!?」と思わず突っ込みたくなるラストですね。「アゼダラクの聖性」は悪の修道僧を倒す任務も無にする斜め上のラストに…若いイケメンに弱いのは魔女も同じですか。 2018/06/28
misui
9
フランスの架空の一地方・アヴェロワーニュを舞台とした幻想的な諸篇、および降霊術にまつわる綺譚を収める。中世の土俗的な雰囲気と適度にパルプな展開で、重すぎない物語は次々と倦かず読ませる。アヴェロワーニュはややファンタジー寄りか。また、ラヴクラフトとも交流があったとのことで時折出てくるクトゥルーネタも楽しく、特に降霊術の話にそれが顕著。時空のスケールに眩惑される「アフォーゴモンの鎖」と、皮肉で愛らしい「分裂症の造物主」が気に入った。絶妙に愉しい一冊です。2013/01/31