内容説明
「『ピックマンのモデル』だ」蒐集家のキースが骨董屋で買った絵を見るなり、友人が言った。絵の片隈に署名がある。R・アプトン・ピックマン。ラヴクラフトの小説に登場する画家の名だ。フィクションのはずなのに現実に存在していたとは。そのころ南太平洋の一郭で、大いなるクトゥルーが蠢動を始めていた。世界に永遠の治世をもたらすために。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miroku
23
もしもラヴクラフトの小説が、事実だったら・・・。ラヴクラフトへの敬意が書かせた作品。愛である。2013/12/04
Ribes triste
11
ロバート・ブロックのラヴクラフト愛が熱い1冊です。とはいえ、完全なる模倣作品に終わらず、いかにもブロックらしい展開です。クトゥルフ物を初めて読む人には、ラヴクラフト作品の読書案内になるかも。まさか、ブロックとラヴクラフトが文通していたとは知りませんでした。マニア向けですが…。2019/06/28
けいちゃっぷ
10
某ブックオフでこれを見つけた時、背表紙に「R・ブロック」とあったので「へえ、ローレンス・ブロックがクトゥルーものを書くとは珍しい」と購入したのだが、「まてよ、ローレンスはLで始まったよな」と気が付いたのは帰宅した後。 正直、ラヴクラフトの名前くらいは知ってますがクトゥルー(クトゥルフ?)には興味がないのでほったらかしでしたが、なんとなく読んでみる気に。 ラヴクラフトへのオマージュでしょうか、小説のタイトルや「さわり」が色々とでてきてファンならニヤリとすること間違いないですね。 340ページ2013/06/24
Smith, Ordinary. Person.
8
クトゥルフ神話を一度完結させたと言ってもいい、クトゥルフ神話小説の集大成にして総決算。そしてクトゥルフ神話の、現代との親和性の高さを明示した点で、金字塔的な作品でもある。敬愛していたラヴクラフトのパスティーシュを散りばめさせ、そして彼が生前に書くことのなかった結末をフィニッシュにすることで、本書はラヴクラフトに対する鎮魂曲(レクイエム)ともなった。ブロックが作曲し、強壮なる使者が指揮棒を振り、神話生物たちが奏でる壮大な交響楽(シンフォニー)。ぜひ一度は堪能してほしい。2022/08/06
三柴ゆよし
8
再読。祝復刊。ながらく絶版だったので、買うならいまですぞ。クトゥルー神話は高校生の頃ずいぶん読んだ。いまにして思えば気持ちの悪い高校生もいたもので、まわりの人たちが健全に(?)漱石だの太宰だの読んでいる中、「ふんぐるい むぐるうなふ」してたのである。ロバート・ブロックはラヴクラフト・チルドレンのひとりであり、本書はクトゥルー神話のなかでも、最高峰のエンタメ長編といって差し支えない。ラヴクラフトの小説がもし事実だったとしたら……。オマージュに満ちた傑作。クトゥルー神話初心者の方にもオススメです。2009/10/07