内容説明
ロンドンの医師サイレンスのもとには超自然現象に悩むさまざまな患者が訪れる。奇怪な謎に挑む“心霊博士”の冒険。屋敷の悪霊に取り憑かれた作家、前世の記憶から猫の町に引き寄せられた男、旅の途中で30年ぶりに母校を訪れ黒魔術に引きずり込まれた商人、激しい恋情のすえ驚愕の人狼事件を経験した青年…英国を代表する恐怖文学の巨匠による人気連作全6作を完全新訳で贈る。
著者等紹介
植松靖夫[ウエマツヤスオ]
英文学者・翻訳家・辞書編纂者。上智大学大学院博士後期課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sin
52
概ね当時の恐怖小説と云うものは持って廻った表現で予定調和の感のある結末に読者を導くきらいがあるように感じてやまないが、作者のオカルティズムへの憧憬が読者を謹み深く導き人間存在の神秘性へと誘う。「犬のキャンプ」に観られる大自然の描写のその寂寥感は見事だが、人間に染まらない世界に魂が無いとの決め付けは何がなし腑に落ちない。また各短編に共通して当時の知ったかぶり知識人相手の煙に撒く長口舌と云う感も無きにしも非ずで、やはり冗長な感じは否めない。2019/06/19
miroku
25
古色を帯びているのは確かなのだが、そこも味わいと言うべき作品。2013/12/17
藤月はな(灯れ松明の火)
21
美しきも良き時代を反映したゴシックホラーでした。まだ、科学では解明できない様々な事例を心霊方面から考える博士の心意気や心霊者に対しての視点が素敵でした。「猫が魔を好み、犬は魔を恐れる」という考えも怖くて不思議な本を好む者としては納得できます。「炎魔」はラストに戦慄しつつも無性に悲しくなりました。様々な呪術や霊魂、前世などのオカルトワードもふんだんに盛り込まれていて満足です。2011/06/05
rokoroko
16
ジョン・サイレンスは医師でもある。どこかで読んだなと思ったら宮部氏の百物語シリーズに似ている。患者の心霊現象を読み解くものだけど。読み辛いや2021/01/12
歩月るな
16
怪奇小説と探偵小説は隣人同士。観察眼というより、さすがは心霊博士、薔薇十字探偵社の榎さん以上の能力を持っている気がする。ホームズと同時代の中の希少な成功作の一人で、当時の広告戦略の恩恵も見逃せない。ブラックウッドの経歴にそぐわない現代的な姿勢と創作力は素晴らしいもの。無邪気。翻訳には割とあったりする誤字か脱字か故意の表現なのか良くわからない箇所が割とあるんだけど気にしなければ気にならない程度だけどちょっとそれが多めに感じた。まあ読み慣れていれば邪魔にはならない。これを読んだ事で『猫町』に進めるようになる。2016/10/03