出版社内容情報
パトリシア・A・マキリップ[マキリップ]
著・文・その他
原島文世[ハラシマフミヨ]
翻訳
内容説明
レイン十二邦を統べる王の宮殿。その下にある王立図書館で、捨て子だったネペンテスは育った。ある日、魔法学校の学生から預かった一冊の本。そこに茨のような謎めいた文字で綴られていたのは、かつて世界を征服した王と魔術師の古い伝説だった。おりしも年若い女王の即位に揺れるレイン十二邦は、次第に運命の渦に巻き込まれていく。名手マキリップが織りなす、謎と伝説の物語。
著者等紹介
原島文世[ハラシマフミヨ]
群馬県生まれ。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
116
図書館で育った孤児が謎の文字で書かれた古代の伝説に没頭する。ストーリーはヒロインの動向と伝説の内容に加えて、王位を継いだばかりの頼りない女王をローテーションする方式で、「茨」は両界を結ぶ文字のみならず構成面や人間劇でも重要なモチーフとなっている。現代と古代の縫合の強引さや後半の展開の速さはリスキーなものだが、感性に訴える表現力により動き以上の緊迫感が現れている。加えて著者の作品の中でも女性としての視点が比較的強く打ち出されており、やきもきしながらフォローするヴィヴェイや大胆な決断をするケインらが魅力的。2024/02/15
miri
54
数あるファンタジーの中でこの物語は別格。図書館の孤児ネペンテスが茨文字の本に魅せられ解読していく中で、時代に忘れられた始祖アクシスとケインの物語が少しずつ解きほぐされていく。煙るような言葉で愛と絆が綴られ、落涙し、最後のケインの決断が身に染みた。一通り読み終わって余韻に浸りながら、物語の配置がこれ以外ないというほど優れているということに気づく。力量のある著者というのは読んでいる最中は気づかせないものなのですね。2019/10/13
昼夜
40
最初は少し読みにくくて世界に入っていけなかったけど、気づけば主人公と一緒に自分も茨に囚われてました。静かに語りかけてくる感じで森の中にいる錯覚もあいまって癒しを感じます。それと図書館での暮らしや茨文字、魚文字の翻訳作業とか本好きにはたまらなかったです。2011/01/06
さつき
39
再読。久しぶりのマキリップの作品。海を臨む崖の上の宮殿、その地下にある図書館。謎めいた森、空の学院など舞台となる場所の独特な雰囲気に浸りました。孤児として育ったネペンテスの気丈な様子と、父の急死により女王となったテッサラのよるべなさの描き分けが見事です。愛する人に尽くし続けたケインの最後の決断は、とても重く感じます。三人が明るい穏やかな未来を共有してくれたら、と思います。2016/11/01
星落秋風五丈原
34
「本作のタイトルに登場する茨の花言葉は「不屈の精神」。読み終えてみるとなるほど三人のヒロインの不屈の精神が、物語を動かした。年若き故に軽んじられる王位継承者」というシチュエーションは 『影のオンブリア』と共通。『影のオンブリア』では絵が異世界と現実のかけ橋となりますが、今回現在と過去を繋ぐのは本。読者は、古代本の読み手であるネペンテスと同じ立場に立って読み進め本に書かれた内容を知った時には『はてしない物語』でいきなり本から呼びかけられたバスチアン少年みたいに驚く。ああ、本当の主人公はこの人だったのか、と。2011/01/01
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- 和書
- 続く、イエローマジック