出版社内容情報
アーサー・マッケン[アーサーマッケン]
著・文・その他
平井呈一[ヒライテイイチ]
翻訳
内容説明
罪とエクスタシーの作家アーサー・マッケン。イギリス怪奇小説の黄金期を代表する彼の作品は、いずれも妖しいまでの白光に包まれている。本書には、白い粉薬を飲んだがために肉体が溶けてしまう青年を描いた「白い粉薬のはなし」をはじめ、円環をなす一連の奇譚を集めた表題作に、“聖杯”をテーマにすえ、怪奇小説のひとつの終点をも暗示する「大いなる来復」を併せて収録した。
著者等紹介
平井呈一[ヒライテイイチ]
本名・平井程一。1902年東京に生まれる。早稲田大学英文学科中退。1967年「小泉八雲作品集」全12巻完成により日本翻訳文化賞受賞。1976年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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absinthe
97
ラヴクラフトにも影響を与えたというアーサーマッケンの本。本書は短編集だが、薄気味悪い世界観は秀逸。繋がりの無い短編集のようにもみえるが、実は少しずつ関連している。
HANA
77
何度目かわからない再読。主人公たちが登場人物の語りを聞くことによって物語が進んでいくという千夜一夜みたいな形式なのだが、その語り手が信用に値しないという事は読者にははっきりわかっているのがポイント。そのためか語り自体がどこか妖気を帯びているように感じる。初読の時以来忘れる事が出来ない「黒い石印のはなし」「白い粉薬のはなし」はもちろん、些細なエピソードに至るまでどこか鬼気迫る物があるな。読んでいるうちに倫敦は妖都と化し、ウェールズの田舎には聖なるものが顕現する。やはり読んでいるとため息しか出ない傑作である。2023/08/02
いりあ
37
イギリスの小説家Arthur Machenが1895年に発表した"怪奇クラブ"と1915年に発表した"大いなる来復"の2作品が収録されてます。発表当時、ロンドンでは彼の作品は不道徳であるとして激しい批判を受けましたが、アメリカを中心に怪奇小説の古典として評価されています。特にクトゥルフ神話で有名なラヴクラフトは彼を高く評価しています。どちらも連作形式で書かれた作品で、始めのうちは話のテンポについていきにくかったのですが、バラバラの怪奇譚が徐々に集まり、最後に一本に繋がった時には時に思わずゾクリとしました。2013/04/04
藤月はな(灯れ松明の火)
37
「怪奇クラブ」収録作には、国書刊行会のバベルの図書館シリーズで読んでいた作品もあったのですが連作だと知ってその後の語り部たちの恐怖や精神的に奇妙になっている所により、ぞっとさせられました。暗闇に潜み、蠢く「何か」に伝染したように全てが緩い円環状を描きながら想像することも悍ましい最後へと辿り着く様は圧巻。関係者ではない客体=主人公達があってこそ、怖さを募らせています。「大いなる来福」は信仰を内心では馬鹿にしていた主人公を見抜き、非難する村人に「覚に遭う怖さはこのようなものなのだろうか」とぞっとしました。2013/01/07
おにく
35
雰囲気ある表紙に、買った当初は嬉しくて見える所に飾ってました。舞台は19世紀のロンドン。禁断の儀式を記念し、およそ100年前に造られたティペリウス金貨を巡り、裏路地の悪い者たちが暗躍する。金貨に彫られた“パンの大神”や、猥雑な儀式を行う異教徒の存在が見え隠れしますが、実は叙述トリックを使った犯罪小説であり、丹念に登場人物の特徴を追っていくと、この“怪奇クラブ”の目的が分かってきます。幻想を犯罪に利用する者、それらを信じないリアリストなど、この時代の幻想小説の立ち位置が垣間みえるようでした。2024/06/25