出版社内容情報
ドイツが東西に分断された冷戦のさなか、画家・青木優二の前に現れたベルリンからの来訪者。エルザと名乗るその女性は、はじめて出会ったはずの青木に、彼も知らない彼自身の秘密を告げる。真実を確かめるためヨーロッパへ旅立つ青木――みずからの秘密をめぐる一人の画家の探偵行は、鏤められた物語の断片と徐々に繋がり、果てに壮大な騙し絵を浮かびあがらせる。第二次世界大戦と東西冷戦――謎解きの名手が二つの戦争の背後に仕掛けを凝らした推理長編。
内容説明
ドイツが東西に分断された冷戦のさなか、日本人画家・青木優二の前に現れたベルリンからの来訪者。エルザと名乗るその女性に、青木は出自の秘密を告げられる。真実を確かめるためヨーロッパへ旅立つ青木。一人の画家の探偵行は、鏤められた物語の断片と繋がり、果てに一枚の騙し絵を浮かびあがらせる。第二次世界大戦と東西冷戦―二つの戦争の背後に仕掛けを凝らした推理長編。
著者等紹介
連城三紀彦[レンジョウミキヒコ]
1948年愛知県生まれ。早稲田大学卒。78年「変調二人羽織」で第3回幻影城新人賞を受賞、79年に初の著書『暗色コメディ』を刊行する。81年「戻り川心中」が第34回日本推理作家協会賞を、84年『恋文』が第91回直木賞を受賞。2013年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
101
この本は、最初に単行本で出版されたときにかなり入れ込んで読んだ本でしたがかなり忘れていました。その10年近く前にドイツにいたことがあったので、東西ドイツの状況などをよく書かれていると思いました。主人公(日本人とドイツ人との実は混血児)の生い立ちを探していくとともに国際的な陰謀のようなものに巻き込まれていきます。やはり連城さんお得意の目くらましのような込み入った感じの場面が多く楽しめます。2024/06/29
HANA
65
冷戦時二つに分かたれたベルリン。元ナチと反ナチ、ホロコーストの加害者と被害者。日本人と外国人のハーフが出生の秘密を探るというのが大まかなストーリーであるが、物語は群像劇の趣を持ち様々な人間が立場を越えて入り乱れる様はまさに「黄昏」の題名に偽りなし。著者の小説は登場人物の心情に分け入った物が多く、斯様な国際謀略小説は珍しいけどいやコレ凄い。登場人物の立ち位置が昼から黄昏を経て夜になる様に感じる上、物語の最大の謎「主人公の出生の秘密」がまたとんでもない大仕掛け。でも物語の底にある物は著者らしいと感じるなあ。2022/03/16
ALATA
59
冒頭、最後の1日から始まる第一章。リオデジャネイロ、ニューヨーク、東京、ベルリン、パリと舞台が周り複合多発的に事件が巻き起こるミステリー。かのオデッサファイルのナチス狩りのような陰惨な場面は少ないがジワジワくる薄気味悪さを描く連城さん、得意とするところですね。とくに一見関係のないようなナサイドストーリーが収斂されていくところと最期に明かされる真実には驚かされる★5※東ベルリンと西ベルリン、重い戦後を引きずりながら恋愛サスペンスとしても昇華させる手腕は素晴らしい👏2025/04/28
geshi
34
連城にしては珍しい国際的謀略ミステリーと思って読んでいたら、とんでもない所まで連れていかれた。海を越え立ち位置も違う人々の物語が段落を区切らずに変わるのにちょっと戸惑うが、映画的手法として映像が目に浮かびやすい。その幻惑感も加わって、東と西、被害者と加害者、様々な境界線が一流の騙しによって揺らぎ、全ての探偵行動が覆される大がかりさに見合うだけの途方もない大風呂敷が炸裂する。この作品がベルリンの壁崩壊の前年に書かれたという事実も含めて、時代の黄昏に包み込まれる。2022/03/30
stobe1904
19
【ミステリランキングを席巻した歴史スリラー】著者には珍しい海外を舞台にした作品。ドイツが東西に分断されていた冷戦時代に日本人画家青木が巻き込まれたナチス時代の謎とは…。壮大な騙し絵を丹念な筆致で叙情的に描くスタイルはこの作品でも健在。極端に改行が少ない実験的な書きっぷりは読みづらさを感じる場面も多々あったが、この作品の良さが損なわれることはなかった。東西ドイツ統合直前に書かれたことには時代的な意義があったのかもしれない。★★★★★2022/04/27