出版社内容情報
鴬橋派出所管内で起きた殺人が、刑事を目指す若き外勤警官の運命を変えた。死体に残された傷、調査員だった被害者の目的……真実は何処にあるのか? 阿南シリーズ第一弾。
内容説明
いなくなった飼犬捜し、蛇の捕獲、自転車置場にたむろする少年たちに対する苦情の対応―刑事を目指す青年巡査・阿南は、日常業務に忙殺されながら、やがて管内で起きた興信所員殺害事件の謎に直面する。「人間は間違ってはいけない」を規範とする青年がたどりついた悲しい真相とは?ひとりの青年の不器用な足跡を描く太田忠司渾身のライフワーク・シリーズ、鮮烈なる第一弾。
著者等紹介
太田忠司[オオタタダシ]
1959年愛知県生まれ。81年、「帰郷」が星新一ショートショート・コンテストで優秀作に選ばれた後、90年に長編『僕の殺人』で本格的なデビューを果たす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
森オサム
55
阿南シリーズ第一作。何気なく読んだ「無伴奏」が凄く良くて、遡って読んでみたいと思った。が、売れて無いんだろなぁ、古書で探すのに丁度1年かかりました。内容は青春ミステリー(成長譚と言う意味で)、もしくは変格ハードボイルド(主人公がブレるんで)、と言う感じであるが、いずれにしても雰囲気が暗い。何せ阿南が変人過ぎて怖いよ、考え方が独特過ぎる。ミステリーとしては結構派手で結構ざっくりしてる、本格では無いかな。つまり本作の魅力は、阿南のキャラに尽きる。気持ち悪いが目が離せない男、シリーズを追いかけ変化を見てみたい。2019/09/08
たち
37
『無伴奏』を先に読んでいるので、阿南の成長ぶりがよくわかります。彼はこんなにも生きづらい人間だったのですね…。私だったら一緒にはいられないなぁ~息が詰まる。彼の身に降りかかる、あれもこれも、全て彼には必要な事のように感じます。これは阿南の修行の記録ですね。さて、次はどんな出来事に出会うのかな?2018/10/23
よむよむ
27
“正しいこと”を貫き通していた一人の警官が職を辞するに到る事件。うん、こういうベタな感じ、嫌いじゃない。でもやっぱり物足りないかな。終盤に詰め込みすぎだったような・・・2011/09/23
ヨーコ・オクダ
26
阿南シリーズ。刑事になりたいお巡りさん・阿南が主人公。実は、冒頭の部分にもある通り、現在彼は警官ではなくなっている。その原因となった事件を振り返ったストーリー。巡査としての業務をこなしつつ、管内で起こった殺人事件を個人的に追っていくと、阿南のごく身近な環境内でのひとつひとつの事象がリンクしていることが明らかに…。若干出来過ぎ感もあるんやけど、彼のバックグラウンドがきちんと仕込まれているので、阿南青年の成長小説として楽しめる。最後まで読んでから序章に戻ってみると、その成長ぶりが確実に分かるからねー!2017/11/16
nins
22
阿南シリーズの第1弾。創元推理文庫で連続刊行されて読めるのは嬉しい。ハードボイルドミステリ。主人公阿南の過去の回想から始まる物語。警官なら正しいことが出来きると考えていた阿南。自分のモラルに基づいて自分が正しい、正しくないを決めるという窮屈で偏った考え方が基準であり、その他の周りの行動は考えない。これでもかというくらい阿南の内面が全面に押し出された本作。管内で起きた殺人事件。その後、いくつか事件が絡み合い、大きな結末へ。伏線は分かりやすいものの、それだけではなく、最後の展開はやりきった感がみられ面白い。2011/05/08