出版社内容情報
授業が終われば速やかに帰宅し、成績は中より上、通学区域で奉仕活動をすべし――御出学園帰宅部は、世間の尺度と一味ちがう。ベニヤ製の人形が夜な夜な徘徊していると聞いて調査に乗り出したのは、地域の皆さんのためにと燃えたわけではなく単なる成り行きだったが、結果的に帰宅部の認知度は上がり、相談と称して持ち込まれるトラブルの数も増えていく。部員たちがのほほんと、時には深刻に、謎を解こうと知恵を絞るが……。四編収録の連作集。
内容説明
成績が悪いと校内のトイレ掃除―そんな決まりのある帰宅部に登録した七人が、愚痴を聞かされたり雑用に駆り出されたり、地域ボランティアの名のもと厄介事に首を突っ込んだりと、お人好しの面目躍如たる部活動にいそしむ。笑いも涙も謎もある、楽しかるべき高校生活。帰宅部の本分は「まっすぐ帰ること」なのに、なかなか全うできない。さて、今日は平穏無事に帰れるだろうか。
著者等紹介
阿藤玲[アトウレイ]
岡山県生まれ。甲南女子大学文学部国文学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
75
圧倒されたのが、「左利きの月」。前2編と比べて、すごい論理性が感じられた。証言は本当なのか、確かめる方法があるのか、解かれるべき問題の割に、こんなに輻輳してしまっていいのか、等々。最も感心してしまったのは、女子の描写がうまいこと。ん? ここまで読んで初めて疑問。そういえば、作者の名前は男性とは限らないのでは? 「大久保怜」は男性の司会者だったが。ここでカバー袖を見て疑問氷解。勝手な勘違いでした。陳謝いたします。解説に「左利きの月」が白眉とあったが、うなずいた。学園生活と町内会的雰囲気も効果的でよかった。2021/02/03
hnzwd
49
日常系青春ミステリ。デビュー作の短編集ですが読みやすく、完成度高いと感じました。動機が高校生らしいあたりは上手くみずみずしい感じが出てますし、、。中でも『左利きの月』は良い。事故により一人だけ亡くなってしまった双子の兄弟。亡くなる前に撮られた写真に写るのは、兄弟のどちらなのか。。なぜ、それが問題になるのかも含めて、青春を上手く描けている気がします。主人公達に加え、各話のライバルや関係者と、登場人物はもう少し絞っても良かったかな。2017/09/14
はるき
41
日常の謎系で、高校生探偵団(帰宅部)。ラノベに有りそうな設定ですが、そこは創元推理文庫。 粗削りですが中々のクオリティーだと思います。ラブでコメな展開が続編で期待できそうですが、シリーズ化なるかしら。阿藤玲さん、お薦めです。2017/09/14
香翠
38
爽やかなストーリーを楽しみました。甘酸っぱいも苦いもあったけれど、学生時代のほんのひとときをこの学校で過ごすのも悪く無さそうだ。2022/03/10
よっち
37
部活必須の御出学園で通学地域で社会奉仕を義務付けられた独特の帰宅部。そこに所属する佐々木幸弘が地域で起こる謎や事件を仲間とともに解いていく青春ミステリ。夜な夜な動くという噂のベニヤ製の人形の謎やたたかうにんじん、双子を巡る複雑な想い、商店街文化祭のお姫様コンテストにまつわるあれこれ。やや若干登場人物が多いかなという印象はありましたけど、繊細な人間関係の機微にも配慮しながら解き明かしてゆく謎解きは主人公らしくて、彼がようやく意識し始めた幼馴染との関係が今後どうなってゆくのか、続きが読んでみたいと思いました。2017/10/05