内容説明
“辺境の人”に置き忘れられた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の“千里眼奥様”と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。―千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く一族の姿を鮮やかに描き上げた稀代の雄編。第60回日本推理作家協会賞受賞。
著者等紹介
桜庭一樹[サクラバカズキ]
1999年、デビュー。2003年開始の“GOSICK”シリーズで多くの読者を獲得し、さらに04年に発表した『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価され、一気に注目の存在となる。07年『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞を、08年『私の男』で第138回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
射手座の天使あきちゃん
213
千里眼奥様と呼ばれた祖母・万葉、暴走族レディース「製鉄天使」のヘッドを経て伝説の少女漫画家となった母・毛毬、なに不自由なく気怠く現代を生きる私・瞳子 山陰の旧家・赤朽葉家の三代の女の生き様を縦糸に、昭和の時代風俗や事件を横糸に織りなす壮大な時代パノラマ小説でした、終盤のミステリー仕立ても「なるほど!」と満足!! (^_^)ok2012/02/24
麦ちゃんの下僕
172
オーディオブック+文庫本。鳥取西部で古から製鉄業を営んできた旧家「赤朽葉家」を舞台に、万葉・毛毬・瞳子という3代の女が生きた1950年代~2000年代までを描く、3部構成の一大“年代記”…であると同時に、語り手である瞳子が1つの“謎”を解き明かしていく“ミステリー”としての面白さも備えた、とにかく長大で様々な要素を含む(桜庭さんが言うところの)「全体小説」です。時代と共に変化する環境や人の描写がリアルな一方で、万葉の出自や“未来視”といったファンタジー性も織り込まれた、何とも不思議な感覚の作品でした♪︎2022/05/03
ナマアタタカイカタタタキキ
135
現実の時間軸の中で進んでいくものの、その上にかなり独特な世界観をそのまま乗せているため、入り込むまでに少しだけ時間を要したけれど、スケールの大きな作品故に、読み終えた時の満足感もひとしおだった。絶対に表現したいものが先にあって、その為にはどんなへんてこな展開や設定を用いることも厭わない、そんな風にも捉えられる。ミステリー要素は最後の方に取って付けた感が否めず、その部分に期待した読者は裏切られた気になりそうだが、息を飲む瞬間や胸が締め付けられる場面が沢山あり、読書の中でしか得難い体験がぎっしり詰まった一冊。2020/07/24
エドワード
129
女性三代の人生をたどって描く地方の戦後史。製鉄業を営む鳥取県の素封家、赤朽葉家に<山の民の捨て子>万葉が嫁に入る。彼女は「もののけ姫」のようだ。そこに中国地方の土俗的な雰囲気=横溝正史の世界が加わる。時代は高度成長、石油ショック、バブル景気とその崩壊、21世紀と進む。万葉の娘毛毬は丙午の生まれ。不良もマンガ家も、力一杯生きる。私に最も近い世代だ。毛毬の娘瞳子は平成生まれ。何をしたいのか分からない。この親子の生き様の違いが時代を象徴する。「恋のバカンス」が万葉、「イマジン」が毛毬なら、瞳子の歌は何だろうか。2013/08/03
ALATA
124
鳥取の旧家に生きる千里眼を祖母に持つ女三代の物語り。不思議なお告げから、請われて嫁入りする万葉は神話的世界へ。高度成長期、赤朽葉製鉄の公害問題とレディースのトップ、売れっ子漫画家となった毛毱が鮮やかに時代の流れに乗る姿はいきいきしてる。バブルがはじけ屋敷が寂れる一方、「人を殺した」祖母の臨終の言葉がトーコの胸に掠めミステリアスな展開が連綿と続く★4※この国の未来は私たちにかかっている。不協和音を奏でる謎めいた世界を明るく照らしたいものだ。2021/12/12