内容説明
16ノットで1時間、これで尾道に着くことはできますか。瀬戸内で海上タクシーを営む寺田のもとに、殺人事件の容疑者が主張するアリバイを崩すべく、刑事が知恵を借りにきた。容疑者は熟練の同業者。寺田は物理的に不可能な壁を破れるか。驚愕のアリバイ崩し「見えないロープ」ほか、海上タクシー“ガル3号”船長の寺田と助手の弓が遭遇する7つの事件を収録。『二島縁起』姉妹編。
著者等紹介
多島斗志之[タジマトシユキ]
1948年生まれ。早稲田大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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四葉
15
二島縁起の姉妹編。海での仕事を生業とする玄人の世界にほんの少しだけ浸かれる短編集。四国の母港今治からお客を乗せ出航し、ミステリーに巻き込まれるわけですが、一緒に苦難を乗り越えた船長、助手の弓、そして小型船ガルに対するお客さんの感謝の念や喜びを我が事のように感じ取らせる文章が大好き。読んでいる間だけガルをチャーターした気分です。今日も今治への帰港が早い。2013/03/03
岡本匠
11
タイトルを見て、最初はSFかな?と思ったのだけれど、瀬戸内海を行き来する海上タクシーの話であった。ちゃんとタイトルに書いてあるんだけれどね。ミステリー要素、ハードボイルド要素など色々入っていて楽しかった。多島斗志之は、名前は知っていたけど初めて読んだ作家。シリーズとしてあと2冊あるのだとか。読んでみたい!2017/05/10
鐵太郎
8
海上タクシー<ガル3号>と寺田船長が巻き込まれる事件を綴った短編集です。「二島縁起」の姉妹編。一作一作、これでもかと思うほど別なパターンを見せてくれます。瀬戸内海を走り回る海上タクシーと、海と船と、さまざまな運命をしょった人々と、さえない中年男の寺田と助手の弓が見せる、いろいろな顔です。「N7↑」「部屋の瀬戸」「見えないロープ」「謎々」「マーキング」「コウゾウ機」「灘」。この短編集が、<ガル3号>冒険譚の最後になります。作家は、これ以後このシリーズを書くつもりはないそうな。残念。2007/08/10
LIAN
7
昔ラジオで“海賊モア船長”を聴いていたのが懐かしいです(^-^) 同じ作者とは知らず古本屋で何となく手に入れた本書ですが、瀬戸内の実際にある地名が使われ、期待以上に面白かったです。海上タクシ運転手の寺田さんが遭遇する海の上のミステリ。潮風にあたりたくなりました。2010/08/09
アーノルド
5
5作品、6冊目となる多島作品 『不思議島』、『ニ島縁起』に継いでの、本作品なので良く悪くも入り易かった 瀬戸内海の“しまなみ海道”あたりを舞台にした海上タクシーの物語で、7つの短編集 特に抜きに出る作品はないのですが、どれも同等の浸透性があり、情景が浮かびやすい作品です 穏やかでノンビリしたイメージの瀬戸内海なのですが、本作品によって何処か陰鬱なイメージを読者に残さないかが心配です そんな心配も、著者の筆力からでしょう また、後を惹かない問答無用の締め方などが、余計に余韻を残す…そんな作品です 2020/03/12