内容説明
五つの島々をまわって数人ずつ客を拾い、合計二十五人を輸送してほしい、但し目的地は全員が乗船するまで秘密―奇妙な依頼の目的は?潮見島と風見島、瀬戸内海に浮かぶ二つの島の対立に心ならずも巻き込まれた海上タクシー船長・寺田の前に、さらに不審死の謎が立ち塞がる。冒険小説趣向や歴史の謎を取り入れた傑作ミステリ、初文庫化。『多島斗志之コレクション』第二弾。
著者等紹介
多島斗志之[タジマトシユキ]
1948年生まれ。早稲田大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Yuki
30
瀬戸内海を行く海上タクシー「ガル3号」の船長・寺田はある日奇妙な依頼を受ける。その依頼の顛末から見えてくる潮見島と風見島の橋を巡る対立と、過去の駆け落ち事件と島の因習が絡む物語。ミステリというよりは80~90年代に流行った冒険小説の色合いが強く、クライマックスの海上シーンは手に汗握った。同業者で「竜王」の船長・越智や寺田の助手・弓といった女性の登場人物も海の似合う格好いいキャラで好感度が高い。瀬戸内海を見に行きたくなった。2018/11/07
四葉
16
「モア船長の~」といい何処か和製パイレーツオブオカリビアンを連想させる多島さんですが、あちらをスパロウ船長の物語とするなら、こちらは赤い鼻のおじさん主人公といった感じです(年齢的にも)。興味を誘う幾多のキーワード、海洋冒険、ミステリ、歴史探求と言った具合のものにピンと来た方に特にオススメ。多島さんらしい纏め方でとても面白く読めました。2013/03/02
秋良
11
島の因縁が程よく暗く、無駄な恋愛要素もなく、種明かしもすっきりして読みやすかった。尾道に行った時、瀬戸内海を見たけど綺麗だったな。2018/01/09
rakim
11
島同士の因縁モノ、なんていうと多少陰気くさく思えそうですが、案外海洋冒険ミステリーと家族の物語っぽい明るい部分もあって読み易かったです。多岐にわたる多島さんのストーリーには破綻がほとんどなく、たいてい「面白かった」と思えます。2013/08/13
鐵太郎
7
寺田という主人公は、40代半ば。離婚歴あり。東京での仕事に疲れ、ふらっと旅した瀬戸内海で、海上タクシーと呼ばれる小型の船に乗り、なんとなくその船の船長に弟子入りして免許を取り、有り金をはたいて小さな船を買って海上タクシー<ガル3号>の船長になりました。不思議な人です。彼がこの海で出会った不思議な、過去にさかのぼる怨念がこもった物語がこれ。面白い。2007/08/09