内容説明
春の近づくある日、鳥井真一のもとを二人の老人が訪ねてきた。僕らの年上の友人でもある木村栄三郎さんと、その幼馴染みの高田安次朗さんだ。高田さんが働く動物園で、野良猫の虐待事件が頻発しているという。動物園で鳥井が掴んだ真実は、自身がひきこもりとなった出来事とどうつながるのか―。鳥井は外の世界に飛び立てるのか。感動のシリーズ完結編、文庫版特別付録付き。
著者等紹介
坂木司[サカキツカサ]
1969年東京生まれ。2002年覆面作家として『青空の卵』を刊行し衝撃のデビューをかざる。以後『仔羊の巣』『動物園の鳥』を上梓する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
372
シリーズラストは長篇。野良猫の虐待事件から始まるので、日常の謎からは一歩踏み出した感じがある。物理的な謎解きより、心の動きをえぐり出す推理に、ぐいぐいと引き込まれた。途中から読むスピードがどんどん上がって、後半を読み終わるまでの約40分は至福の時間でした。登場人物の心の動揺は大きく、坂木と鳥井の依存関係にも一歩の変化が。ラストの、映画のような凝った編集にはまいりました。2018/03/04
ダイ@2019.11.2~一時休止
304
ひきこもり探偵その3。長編で完結編。引きこもりの原因の人物が現れる。メインの謎は予想通りだけど判らなかった細かい謎もいっぱいあり、最後の終わりも切ないけどイイ。ところで付録のレシピを試した人はどれくらいいるのだろうか?2015/03/07
SJW
263
引きこもり探偵シリーズ三部作の完結編。今回の事件は動物園で頻繁に発生する野良猫の虐待事件。読むのが辛いが許せない犯人を知りたくて一気に読んだ。でも自分が通った高校がこの隣にあったので、その風景や動物たちを思い描けたのでとても親近感が湧いた。今回のテーマは動物への虐待と人への虐め。単に仕返しをするのではなく、なぜ悪いことなのかを犯人に諭して納得させる理想的な方法。虐めをされる側や、助けると自分もターゲットになる恐怖から助けられずに自己嫌悪に陥る様子は痛ましい。虐めを見て見ぬ振りをする先生や教育委員会(続く)2018/07/05
めろんラブ
253
遂にシリーズ完結。鳥井と坂木が信頼できる人達に出会い、それぞれに成長する様がもどかしかったり、微笑ましかったり。自律ある大人となるべく未来に向けて一歩を踏み出すことは、どれほどの覚悟が必要だったろう。この世に悪意はあるけれど、同じ位善意や温かさに満ちていると信じてみよう。大丈夫、もう怖くない。檻を突き破って、外へ空へ飛び立とう。大丈夫、仲間が見守っていてくれるから・・・。鳥井と坂木のこれからをまだまだ見ていたかったけれど、これ以上は野暮かなぁ。お二人の幸せを心よりお祈りいたします(?)。2010/12/13
エンブレムT
202
檻は閉じ込めるための物なのだろうか、守るための物なのだろうか。杖は支えるための物なのだろうか、すがるための物なのだろうか。シリーズの完結編でもある今作は、お人よしで涙もろい坂木が自分の檻に閉じ込めているモノに正面から向き合います。ひきこもり探偵である鳥井じゃなく、ネックは坂木の成長だったのか・・・といろいろと腑におちたのでした。動物園の檻の外で見つかる傷ついた猫たちの謎。変わりゆくものにも変わらないものにも等しく向けた優しい視点での描き方は、物足りなくもあるけれどホッと息をつける居心地の良さがありました。2014/10/06