出版社内容情報
僕の姉は実話怪談作家だ。本名にちなんだ「呻木叫子」というふざけた筆名で、民俗学でのフィールドワークの経験を生かしたルポルタージュ形式の作品を発表している。ある日姉の自宅を訪ねた僕は、密室の中で両瞼を己の髪で縫い合わされて昏睡する姉を発見する。この怪現象は、取材中だった旅館〈K亭〉に出没する霊と関連しているのか? 調査のため〈K亭〉こと影踏亭を訪れた僕は、深夜に発生した奇妙な密室殺人の第一発見者となってしまう――第十七回ミステリーズ!新人賞受賞作ほか全四編を収録する、怪談×ミステリの最前線。
内容説明
僕の姉は怪談作家だ。本名にちなんだ「呻木叫子」というふざけた筆名で、民俗学の知見を生かしたルポ形式の作品を発表している。ある日、自宅で異様な姿となって昏睡する姉を発見した僕は、姉が霊現象を取材していた旅館“K亭”との関連を疑い調査に赴くが、深夜に奇妙な密室殺人が発生し―第17回ミステリーズ!新人賞受賞作ほか、常識を超えた恐怖と驚愕が横溢する全4編。
著者等紹介
大島清昭[オオシマキヨアキ]
1982年栃木県生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。研究者として幽霊・妖怪について論考を発表するかたわら、2020年、怪異と謎解きのバランスの新しさを高く評価された「影踏亭の怪談」で第17回ミステリーズ!新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
179
図書館で何気なく手に取ったが、思わぬ逸品だった。ホラーとミステリの融合を試みた作品は数あるが、一方に傾斜したり均衡を取ろうとして却って曖昧になるなど食い合わせがよくない。しかし本書では、両パートの語り手を別にすることで怪奇性と合理性の共存に成功している。事件は本格物の体裁で解決したはずなのにゾワゾワする不気味さがいつまでも残り、思わず震えてしまったのも一再ではなかった。それでも第1話から3話までは個別の怪談として面白く読んだが、最終話で全てが関連していたと示唆されて最終頁の絶叫に続く見事な構成に感嘆した。2024/10/01
KAZOO
135
初めて読む作者さんですが私はかなり楽しめました。4つの連作短篇が収められていますが最後でそのつながりがあかされることになります。ミステリーとホラーが混在するような感じで読む人によっては若干違和感を覚える方もいるかもしれません。私は絶賛されている澤村伊智さんの作品もかなり読んでいるので楽しむことができて、今後も続編が出るといいなあと思いました。2025/04/30
ma-bo
104
著者の作品は初読み。ホラーとミステリーが融合した短編全4編。本名をもじった怪談作家呻木叫子視点の取材原稿パートと、実際に起こった事件や行方不明の謎を解明するパートが交互に綴られる。ホラー部分(オカルトや都市伝説的な要素、その地域の歴史や伝承を上手く組み込んでいる)とミステリー部分のバランスがよかった。各話合理的な答えが提示されるが、合理的に説明出来ない領域も残しホラーとしての不穏な読後感をもたらしている。最後は……続編あるのか?2023/10/17
眠る山猫屋
77
雰囲気が好き。ペンネーム・呻木叫子ってセンスからして最高じゃないかっ!そんな呻木先生が取材から帰ってきた後、瞼を髪の毛で縫われ意識不明の状態で発見されたという冒頭。怖いトコだらけのスタート。表題作の探偵役の彼が退場した後も、至って冷静な呻木先生に違和感を覚えながらも読み進めていく・・・。朧トンネルの幽霊譚ではトリックのみ解消され、犯人のプロファイリングで終わった物語に消化不良感が残る。ドロドロ坂も然り、怪異は語られたが・・・。最終話・冷凍メロンで全エピソードがひとつにまとまる訳か。この作者さん、原石だ2024/03/07
HANA
77
連作短編集。作家呻木叫子が体験する事件という形になっていて、実際の事件と並行する形で実話怪談という体でそれが語られているのも嬉しいところ。収録作が全て密室と関連しているのも良し。冒頭の表題作こそ一番魅力的な謎「何故両目を自分の髪の毛で縫い合わせていたのか」がそっちに行っちゃったか。と残念に思ったけど、残る話の謎は魅力的。特に三話目の遺体を泥塗れにする必然性から導かれる回答はいいなあ。で四話目「冷凍メロンの怪談」の呑気なタイトルとは裏腹に語られる悍ましい内容。ミステリ好きも怪談好きも満足すると思います。2023/09/02