出版社内容情報
高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの大刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。大刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、大刀洗万智の活動記録。「綱渡りの成功例」など粒揃いの六編、第155回直木賞候補作。
米澤穂信[ヨネザワホノブ]
著・文・その他
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カメ吉
299
六話からなる短編集ですが、どの作品も面白かった。『さよなら妖精』の太刀洗万智の十数年後の活躍?を描いた話。フリーのジャーナリストとして各事件の本質を的確に見抜きそれに迫っていく彼女のキャラに引き込まれました。クールな姿勢の中に時折見せる温かさと人間味が魅力的でした。特に第五話『ナイフを失われた思い出の中に』は秀逸でした。最後に二転三転する推理の面白さと登場する『ヨヴァノヴィチ』氏の妹が『さよなら妖精』のマーヤ?なのかな?と懐かしさもあり感慨深い作品でした。2018/04/22
bunmei
285
『王のサーカス』でも登場した、風変わりなフリージャーナリスト・太刀洗万智の短編集。今回もその観察力と洞察力で、事件の報道や表面には表れてこない、裏に潜む真実を見極めていきます。しかし、その真実を暴くことが、決して心穏やかになるものではなく、むしろ水面下に沈んでいった方が幸せなのかもしれない真実も…。それでも、その残酷ともいえる真実に目を向けようとする、太刀洗のジャーナリスト魂が、この本を貫くテーマなのでしょう。本作では5つの事件について、太刀洗の淡々とした推理を通して、その真実を明らかにしていきます。 2018/05/19
イアン
208
★★★★★★★☆☆☆ジャーナリスト・太刀洗万智が事件を追うベルーフシリーズの短編集。発生した地名から「恋累心中」と呼ばれた高校生の心中事件。しかしその悲劇の裏には意外な動機があった…(「恋累心中」)。収録された6編とも「死の匂い」を色濃く感じさせるが、電話の内容から失踪者の居場所を特定したり、非常食の食べ方から言外の真相を突き止めたりと日常系ミステリの要素もある。表面的に見えるものからその背景を探る洞察力と、掴んだ事実をどう報じるかというジャーナリストとしての矜持。そんな太刀洗万智の魅力が詰まった作品集。2022/09/17
agtk
171
「さよなら妖精」の太刀洗万智の物語。なかなかビターな味わいが切ない。表題作もいいが、「恋累心中」や「ナイフを失われた思い出の中に」も捨てがたい。ジャーナリストとしての太刀洗万智の人間性に魅力を感じる。8月刊行の文庫「王とサーカス」が待ち遠しい。2018/05/21
さばかん
164
大刀洗万智の活動記録。 独自の視点で事実を抉る。 面白かった。2018/10/16