出版社内容情報
北町奉行所に勤める戸田惣左衛門は、若き日より「八丁堀の鷹」とも称されるやり手の同心である。長屋の一室で扼殺されていたお貞。夕餉を準備中の凶行で、鍋には豆腐が煮えていた。長屋の皆は桜見物に出かけており……「花狂い」。吉原で急に用心棒を頼まれた惣左衞門の目の前で、見世の主が殺害された。衝立と惣左衞門によってある種の密室だったはずなのだが……「願い笹」など、惣左衛門とその息子・清之介を主人公に描く四編を収録する。『屍人荘の殺人』と競った、滋味溢れる時代ミステリ。
戸田義長[トダヨシナガ]
著・文・その他
内容説明
北町奉行所に勤める戸田惣左衛門は、『八丁堀の鷹』と称されるやり手の同心である。七夕の夜、吉原で用心棒を頼まれた惣左衛門の目前で、見世の主が刺殺された。衝立と惣左衛門の見張りによって密室状態だったのだが…「願い笹」。江戸から明治へと移りゆく混乱期を、惣左衛門とその息子清之介の目を通して活写した。心地よい人情と謎解きで綴る全四編を収録。文庫オリジナル。
著者等紹介
戸田義長[トダヨシナガ]
1963年東京生まれ。早稲田大学卒。2017年鮎川哲也賞に投じた『恋牡丹』が最終候補作となりデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
84
「八丁堀の鷹」と言われた同心とあったのでどんな切れ者かと思いきや、確かに若かりし頃はそうだったのかも知れないけど、作中の同心は案外フツーの同心でした。事件の解決には周りからの助けもあって一件落着気味なところも。ただ、一話ごとに年数が経っているので、いつの間にか同心も隠居してたりその息子も結婚してたりでその間がないのであれ?と思う事しばしば。4つの物語はどれも面白いです。夫婦、親子愛、切ない女ごころが元の殺人事件。「花狂い」が胸にズンとくる哀しい事件。続編が姉妹編となっているのは興味あるところ。2020/10/11
sin
57
主人公が不在で、ぶつ切りと云う印象は否めない。例えるなら永く続いた連続時代小説の抜粋の様で、各々の物語を繋ぐ登場人物の人間模様や、父親から息子への世代交代といった物語の流れの要所すら間引かれてしまったようで、おいてけぼりに突き放された感じで戸惑いを禁じ得ない。そのミステリー部分の稚拙さはともあれ魅力的な登場人物と、物語に現した人情の機微が絶妙に感じたので残念な仕上がりに思える。2019/01/06
cinos
55
再読。鮎川賞の最終候補だけあって、時代ミステリのミステリ色が強いです。第2話の「願い笹」は現場図まである密室物。「恋狂い」と「雨上がり」のホワイダニットがせつない。「恋牡丹」はアリバイ物ですが、まさかの〇〇にびっくりしました。時代ミステリあまり読まないけれど、これはおすすめします。2020/08/21
penguin-blue
42
時は明治に近い江戸、主人公の同心とその息子(のちにこちらが話の主になる)、探偵役は主人公とゆかりの花魁,後にという王道の舞台設定や謎の作り方は悪くないのだが、登場人物の心情も謎も、すべて言葉で説明させようとしすぎて多弁に過ぎる。そのため、登場人物の心情が軽く、騒々しく見えてしまうのが残念。こちらが時代劇に余韻や、抒情を求めすぎるのかもしれないけれど。2018/11/30
あさうみ
37
良書!!犯人当て、密室トリック、アリバイ崩し、動機探しとミステリーの肝が時代小説で味わえる!推理小説としても水準が高く、その上、親子や夫婦の絆、男女の想いにぐっと来た。主役の人情味ある戸田親子をとりまく女性陣が、これまた凛としているんだ…。時代小説音痴でも読める、いや、こういう時代小説を読みたかった!!!2018/11/06