出版社内容情報
H大三年の中辻恵麻が、学生部の女性職員から無理矢理に紹介された、大型複合商業施設の忘れ物センター──届けられる忘れ物を整理し、引き取りに来る人に対応する──でのアルバイト。引っ込み思案で目立たない、透明なセロファンのような存在の私に、この仕事を紹介したのはなぜ? キーホルダーや手袋など他愛のない物を、施設のはずれまで引き取りに来るのはどうして? 恵麻は、持ち主との出会いやセンターのスタッフとの交流の中で、強張っていた心がゆっくりと解けていく……。六つの忘れ物を巡って描かれる、心に染みる連作集。待望の文庫化。
内容説明
まだ雪の残る3月、H大に通う中辻恵麻が学生部の女性職員から無理矢理に紹介された、商業施設の忘れ物センターでのアルバイト。夏休みに行ったインターンシップでの失敗を引きずる、遠慮がちで自己肯定できない恵麻に、なぜ?忘れ物の持ち主やセンターのスタッフとの交流の中で、恵麻が見いだしたものとは―。六つの忘れ物を巡って描かれる、心にじんわりと染みる連作集。
著者等紹介
乾ルカ[イヌイルカ]
1970年北海道生まれ。2006年「夏光」が第86回オール讀物新人賞を受賞。翌年に受賞作を表題作とした短編集でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kei302
61
切ないラストです。そっかぁ~、向こうが透けて見えるはずや。ラストの真相にたどり着いてようやく、単行本で読んだことに気づく。わたしの もの忘れ……2021/05/18
タルシル📖ヨムノスキー
26
H大学学生部の女性職員・ユウキさんが、3年生の中辻恵麻に無理矢理に紹介したのは、ショッピングモールの忘れ物センターでのアルバイト。そうこれは〝メグル〟の続編的な連作短編集。忘れ物、他人にとってはガラクタ同然の物でも、本人にとってはとても大切な宝物だったりする。とにかく自己肯定感が低く自称「ミス・セロハン」というくらいに卑屈な恵麻。彼女は同僚の水樹や橋野に支えられながら、たくさんの忘れ物とそれらに込められた思いや、謎に触れることで、一歩ずつ成長していくのだが。まさかの最終章!あんな展開を誰が想像しただろう。2023/12/26
TAKA
21
大型商業施設の忘れ物センターでアルバイトを半強制的にさせられる事になった主人公恵麻。届けられた落とし物に纏わるエピソードとそこで働く人との交流の物語。が、ラストは思いもしない方向へ。明かされた想像もしなかった真実に驚かされた。最後が何とも切ない。2021/06/03
mayu
19
主人公の恵麻は、自分の事を存在感のない、向こうが透けて見えるような‘ミスセロファン’だと卑下している大学生。ある時学生部から大型商業施設の忘れ物センターのバイトを押し付けられ、働くことに。 主任の水樹と愛嬌のある橋野、二人と届いた落とし物謎を解決していく連作短篇集。 人から見たらがらくたでも、それは誰かの宝物かもしれない…。想いの込められた忘れ物や、忘れたままの方が良い忘れ物。わざと置き忘れる忘れ物などさまざま。所々に感じた違和感も最後は回収され、『わたしの忘れ物』というタイトルに納得のラストだった。2021/04/23
onasu
18
大学の職員からバイトを奨められる(押し付けられる)とは読み覚えのある設定で、そちらは著者の「メグル」だと直ぐに分かったのですが、その職員も(そんな人は早々いないですが)同一人物とは解説で…。 そんなんで、バイトを通じて何かに気づかせてくれるという構図は変わらないのですが、連作の「忘れ物センター」でのバイトは、忘れ物にまつわる話しに、社員二人が中々の好演で楽しませてくれるが、主人公には随所に腑に落ちないところが。 それが伏線となる結末は予想を外したが、悪くはないものの、ちょっと首を傾げる向きもあるか。2021/06/24