内容説明
銀行の現金輸送車を襲い、一億円を手に入れろ―。鬱屈するしかない日常に辟易し、二人の男が巧妙に仕組んだ輸送車からの現金強奪計画。すべてはうまくいくかのようにみえたのだが…。男たちの野望が招いた悲劇を描く表題作ほか、平和な家庭を突如襲った児童誘拐事件、動物園での密室殺人など、名手・貫井徳郎が鮮やかなストーリーテリングで魅せる、珠玉の中編ミステリ4編。
著者等紹介
貫井徳郎[ヌクイトクロウ]
1968年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年に『慟哭』でデビュー。2010年、『乱反射』で日本推理作家協会賞を、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハッシー
137
★★★★☆ 素晴らしいの一言。珠玉の中編ミステリー四編。どの物語にも最後にあっと驚く仕掛けが待ち受けていて、衝撃的な一文に思わず何度も読み返してしまう。考え抜かれたストーリーと、深みを持つキャラクター、手に汗握るスピーディーな展開、全てが期待以上だった。2018/09/20
hit4papa
89
4作品からなる短編集。ミスリードの効いたタイトル作が良いです。その他は、お話しとしては面白いものの、途中結末が分かってしまいます。息子の誘拐犯から他人の子を誘拐するよう脅迫された夫婦「長く孤独な誘拐」は着想がユニーク。不可能な状況で銃殺された男「二十四羽の目撃者」は、凶器が拳銃ゆえにアメリカの探偵物となりましたか。現金輸送車を襲う計画をたてた二人組「光と影の誘惑」は、まんまと騙されました。母の秘密を探り当ててしまった息子「我が母の教えたまいし歌」は、途中で真相に気づかなければ衝撃的だったかもしれません。2023/03/01
アッシュ姉
84
ハラハラヒリヒリの詰まった中編ミステリ四編。持ち前の鈍さが功を奏し、素直に楽しめました。四編すべての結末を予測できなかった私は逆にミラクル?追い詰められるもしくは追い詰める過程に気を取られて、予想するのを忘れたというか、あえてしなかったというか、ふほほほ。帯なしを手にしたので先入観もなかったし、おほほほ。言い訳はさておき、『愚行録』映画化されたのですね。知らなかった!妻夫木聡さんと満島ひかりさん主演でまもなく公開予定です。2017/02/06
けそけそ
70
悲しみの多い世界で光と影を照らし出すミステリ短編集 ⭐︎3 ミステリの短〜中編4編。悲しく、やるせない気持ちになる話が多い。展開やオチが読めてしまうものも多いが、それでも真相に迫る展開のドキドキ感やその世界観に魅せられる。灰色の世界観の中に白や黒が浮き上がるような印象。2021/02/03
いたろう
70
中編4編。子供を誘拐され、他の子供の誘拐を強要される異色の誘拐劇「長く孤独な誘拐」、サンフランシスコを舞台に保険調査員が密室殺人を調査する「二十四羽の目撃者」、競馬場で出会った二人が、1億円の強奪を計画する表題作「光と影の誘惑」、そして、大学生が父親の死を機に母親が隠す家族の秘密を調べる「我が母の教えたまいし歌」。いずれもラストでヒネリが効いた佳作。特に「二十四羽の目撃者」は、コメディタッチで登場人物のキャラも立ち、アメリカの作家の定番シリーズの一作といった趣で楽しい。続編もあるようなので、読んでみたい。2018/03/03