出版社内容情報
友人が交通事故に遭った都心の街道沿い、まだうっすら残るチョークの跡を眺めながら物思いにふけっていた僕の前に、呼んでもいない無線タクシーが次々と……運転手たちが存在しない乗客を取り合う騒動にまで至った不可解な自動車集結事件をめぐる表題作に、毎朝ベランダの同じ場所に置かれるミネラルウォーターが謎を呼ぶ「水のそとの何か」など、名探偵・猫丸先輩の推理が冴え渡る全六編を収める。『猫丸先輩の空論』を改題、文庫化。
内容説明
友人が交通事故に遭った都心の街道沿い、電柱の傍らに供えられた花を眺めながら物思いに耽っていた男の前に、呼んでもいないタクシーが次々と…運転手たちが存在しない乗客を取り合う騒動にまで至った不可解な自動車集結事件をめぐる表題作、毎朝ベランダの同じ場所に置かれるペットボトルが謎を呼ぶ「水のそとの何か」など、猫丸先輩の推理が冴え渡る全六編を収めた連作短編集。
著者等紹介
倉知淳[クラチジュン]
1962年静岡県生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。93年、『競作五十円玉二十枚の謎』への投稿を経て翌94年、『日曜の夜は出たくない』で本格的な作家デビューを飾る。以後、ユーモラスで親しみやすい作風ながら、ミステリとしての完成度にも妥協しない、高いクオリティの作品群を書き続けている。2001年、『壺中の天国』で第1回本格ミステリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NADIA
49
既読の小説界の中で、私の特に好きな登場人物の一人「猫丸先輩」が、登場人物の日常に起こる不思議を解説してくれる6編の短編集。久々の再開だったが、猫丸先輩の期待通りの活躍に心が躍った。そういえば、猫丸先輩は最近、殺人事件の推理はしていないなと思ったところ、「アマチュア探偵がそうそう立て続けに殺人事件に遭遇するなんてご都合主義みたいじゃなかろうか」とあとがきで読み、私もそういった筋立ての作品を見たり読んだりすると、つい突っ込みを入れてしまうので、何だか作者の倉知さんに親近感を感じてしまった(笑) 面白かった。 2021/02/18
たち
42
読んでから気付いたのですが、再読です。前回は随分前に読みました(覚えてない)。しかし、何度読んでも猫丸先輩は好きだなぁ。どんな色男も猫丸先輩にかかったら形無しだもの。そして猫丸先輩の語り口調は癖になりますね。特にラストの話は面白かったです。いったい、この後どうなったんだろう。すごく気になります。2021/04/10
geshi
33
講談社版既読。『水のそとの何か』語りの中に伏線を忍ばせる技とダイイングメッセージ論の面白味。『とむらい自動車』重いトーンから一転、混乱した状況を更に引っ掻き回す猫丸先輩らしさ。犯人をそこから出してきたか。『子ねこを救え』子ねこの可愛らしい描写が反動として思い込みを助長させるミスリード。『な、なつのこ』モノから属性を外し還元していく推理好きだなぁ。不自然というロジック。『魚か肉か食い物』圧巻の手掛かりのセリフの印象を薄れさせる巧さ。『夜の猫丸』ホラーテイストが推理に「ありえない」と言わせない。2019/08/03
おぬち
31
猫丸先輩シリーズは安定の日常系ミステリー。日常系ミステリーはあまりはもっと!もっと刺激をくれ!!となるのだけれどこのシリーズは猫丸先輩が好きすぎてならない。特にこの短編ではこういうとらえ方もあるよね?というのが多く猫丸先輩の優しさを感じられる。いやーあとがきでもありましたが、私もそろそろ名探偵猫丸みたいです。楽しみ2022/06/07
マルコ(Marco)
28
「猫丸先輩」シリーズの連作コージーミステリー。作品を読む毎に登場人物に共通が在り、今作6話にゆったり時間が経過している事に気付く。猫丸先輩の相変わらずの観察眼と着眼点の鋭さ、好奇心旺盛な行動力は健在。本当にどうでも良い風景の様な一文が推理の重要なヒントになっている話が著者の特徴なので、流さない様に読むしか無い。最後の「夜の猫丸」の内容が通常と異なりホラー気味で、結末も不気味。スイカ割りにルールと協会が在るのは、初めて知った…。2020/07/28