内容説明
二年三カ月ばかり食らい込んで出所したおれは、保護司の娘に一目惚れ。真人間になります、と厳粛に誓約して幸運にも高嶺の花を手折ることが叶ったのだ。しかし、白波稼業へ返り咲く夢断ち難く悶々と過ごす毎日。そんなおれの肚を読んだわが慧眼の恋女房殿は、なんとなんと「夫婦じゃないの。死ぬも生きるも一緒よ。二人で新しい怪盗を作りましょうよ」と宣うた。さても夫婦善哉。
著者等紹介
天藤真[テンドウシン]
1915年8月8日東京生まれ。東京帝国大学国文科卒業。同盟通信記者を経て、戦後は千葉県で開拓農民となる。1962年「宝石」誌に「親友記」を応募し佳作入選。1979年『大誘拐』で日本推理作家協会賞を受賞。1983年1月25日死去
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感想・レビュー
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coco夏ko10角
25
12の作品収録の短編集、76~81・94初出。『純情な蠍』が特に良かった。『七人美登里』の女の子たちがきゃっきゃしてる感じいい。『犯罪は二人で』『一人より二人がよい』『闇の金が呼ぶ』は連作。この奥さんって…。2021/02/28
Tetchy
6
文庫の裏表紙に書いてあるイントロダクションを読んでみると、さもおしどり怪盗夫婦シリーズを中心に編まれたように感じるがさにあらず、12編中3編しかない。このシリーズは最後にほろりと温かいテイストが流れるのがミソ。他は異色のショーショート「のりうつる」以外、天藤真の独壇場で最後の最後まで駄作がなかった。2009/07/11
浅木原
3
全集の最終巻だけど入手順に読んでるので5冊目、晩年の作品にあたるらしい短編12編。『大誘拐』の怪盗版みたいな、表題作→「一人より二人がよい」→「闇の金が呼ぶ」の怪盗&保護司夫婦の連作がこの巻の目玉かな。解説でも書かれてるけど、前科者に対する世間の目の厳しさが非常にさらっと、しかし印象的に書かれるのが美点。1冊分溜まった形で読みたかったですの。それ以外だと愛人の自殺を殺人に偽装しようとする「隠すよりなお顕れる」、死んだ夫の半生を調べているという女が突然押しかけてくる「純情な蠍」あたりがいい感じかな。2015/02/23
つむじ
2
(図書館)天藤真さん初読です。40年から前の作品集ですが、古臭さは感じなかった。別の作品も読んでみよう2014/07/10
小物M2
1
○「運食い野郎」○「推理クラブ殺人事件」○「隠すよりなお顕れる」○「絶命詞」○「のりうつる」○「犯罪は二人で」△「一人より二人がよい」◎「闇の金が呼ぶ」○「純情な蠍」○「採点委員」◎「七人美登利」○「飼われた殺意」2024/03/15