内容説明
片山里の湖畔亭、草鞋を脱いだ男がひとり。旅のお供はからくり眼鏡、風呂場に仕掛けて悦に入る。ある夜目にした光景に、心乱れて気は差して…警察も匙を投げた世にも不思議な「A湖畔の怪事件」とは。五年間の沈黙を破って、湖水の底に葬られた真相を吐露する手記。作品を巡る多彩なエピソードで知られる『一寸法師』を同時収録。連載時の挿絵に乗せて、往時の感興を再び。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
128
★★★★☆ 表題作の他、明智シリーズの『一寸法師』を収録。 表題作は覗き趣味の青年を語り手とした、割とストレートな推理物。真相は途中で大体予測できるが、少しボヤかして読者の想像に任せようとするいわゆるリドルストーリー。 乱歩らしい淫靡な雰囲気もあって隠れた名作だと思う。 『一寸法師』は別の本で登録済みなので詳しく記述しないが、単に猟奇的なだけでなく本格風味も味わえるという個人的にかなり好きな作品。2020/03/25
優希
120
通俗的な2編からなる作品。怪奇小説と探偵小説が融合した独特の世界観は乱歩ならでは。レンズ狂にグロテスクさとしっかりツボは押さえています。ミステリー初心者でもわかりやすいロジックとトリックですが面白い。初期の頃から乱歩の世界観は確立していたのですね。2016/10/25
いたろう
69
文庫の書名は「湖畔亭事件」だが、「湖畔亭事件」より長く、乱歩作品として、より名前が知られている「一寸法師」を併録。知名度の高い「一寸法師」ではなく、「湖畔亭事件」の方を書名にしているのは、「一寸法師」が小説として評価が低いからか。明智小五郎シリーズ初の長編だが、乱歩自身が、小説として幼稚だと自己嫌悪に陥り、新聞連載を度々休載したという作品。確かに、出だしのイメージは鮮烈だが、その後の展開は、少々無理があるよう。しかしこれが、世間的には評判で、何度も映画化されているのは、一寸法師という乱歩らしい造形のせい?2020/04/22
めしいらず
59
正直言って「湖畔亭事件」は凡作、「一寸法師」に至っては駄作だ。真相は早い段階から筒抜けだし、短編を支える程度の物語を水増しして長編に仕立てたようでダレる。特に「一寸法師」は話の辻褄合わせを読まされるような冗漫さで、乱歩自身が忌み嫌ったのも宜なる哉。でもそこは腐っても乱歩だ。「湖畔亭事件」は覗き趣味のレンズ偏執狂がその仕掛けを通して偶然に殺人を目撃する設定の面白み。「一寸法師」は神出鬼没の異形が劇場型犯罪を薄気味悪く盛り上げる。加えて大正の御代の空気を活写する筆の冴え。乱歩好きは駄作にすら愛着を覚えるのだ。2017/11/16
Vakira
56
中坊の時に読んでどんでん返しが面白かった思い出。しかし、どんなどんでん返しだったか?ストーリーはどうだったのか?記憶なし。ん?主人公の私、覗きが趣味だ。コボさんの「箱男」の覗きに通じるものがあるか?急に気になって読んでしまう。ウハ!もろにピーピングトム。潜望鏡の構造を模倣したものを製作して温泉の女湯を覗くと殺人事件を目撃してしまう話。ピーピングトムの私は、ピーピングしたことが後ろめたく真実を語れない。どうする?GOする?今から約100年前の1925年の作品。イヤ~ンのび太さんのエッチ。2024/04/15