内容説明
グラスが二つ載ったテーブルを挾み、対峙する二人の男。夏の末以来、塩の湯A旅館に居つづけの湯治客だ。それぞれの懐に自殺の遺書を用意し、どちらかに毒の入ったグラスをあおって、生き残ったほうが美しい未亡人を手に入れよう、という奇妙で恐ろしい決闘の真っ最中だった。無気味な唇のない骸骨男の飽くなき執念が、奇々怪々な事件を引き起こす。明智と吸血鬼の壮絶な闘い。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aquamarine
84
温泉宿で女性巡って毒杯での決闘をする二人の男を描くプロローグに始まり、ストーリーは妖艶なその女性の周りに起きる様々な事件を経て進みます。乱歩らしい雰囲気を堪能しました。一連の犯人はミステリを読みなれているとわかってしまいますが、誘拐、密室、死体消失等次々と解き明かす明智探偵の魅力はバッチリです。ラストの事件は思わず、これはあれだわ!というトリックで思わずニヤリ。またこれが小林少年初登場作品だそうで、この後少年探偵団に繋がっていくのかと思うと感慨深いものがあります。2017/10/15
セウテス
68
〔再読〕美貌の財産家の女性を巡って連続殺人事件が起こり、名探偵明智小五郎と小林少年が活躍します。犯人や遺体消失の謎、女性を付け狙う犯人は誰なのかは、予測する事が可能です。ですが、犯人の動機を初め突然明智探偵より明かされる事も多く、やはりここは明智小五郎探偵活劇を楽しみます、が正解でしょう。この創元文庫シリーズは、当時の挿絵がそのまま載っていますので、雰囲気も掴みやすいです。乱歩先生らしいプロローグは、緊張感に溢れ読者を一気に物語に取り込んで仕舞います。これぞエンターテイメント、難しく考えず楽しみましょう。2015/10/19
Ryuko
33
生きながらの埋葬、追い詰められた犯人が不可解に消え去る、など乱歩作品ではおなじみのあれこれが登場。明智小五郎はもちろん小林少年、文代さんも大活躍で楽しめる作品。さらにラストは、切ない思いもさせてくれる、サービス満点の娯楽作品。犯人自体は、早めに予想はつくが、その動機は予想外でとても悲しいものだった。2019/08/31
coco夏ko10角
30
めっさ怪しいから犯人はすぐわかるけど、真相では予想外のこともいくつか。花氷のくだりすごいなぁ。事件解決…か?の後もよかった。小林少年初登場話だったのか。あと文代さんとのこと気になるから『魔術師』読もう。2017/03/19
冬見
23
乱歩の小説は本当に読み易い。冒険活劇的な要素が物語全体を覆いながらも基本は探偵小説。明智が出てくるとトントン拍子に、あってないような伏線を回収しながら華麗に進んでゆくので、なんだかズルいなあと思いつつ、でも面白いからいいかあと、ハラハラしながら読み進めてしまう。恐るべき執念でいたぶり、貪り尽くす。「吸血鬼」とはそういうことか。果たして本当に「吸血鬼」と言えるのは誰だったのだらう。2017/12/21