内容説明
引退した名警官ガス・ランダーは、ウエストポイント陸軍士官学校のセアー校長に呼び出され、事件の捜査を依頼される。同校の士官候補生の首吊り死体から、何者かが心臓をくり抜き持ち去ったというのだ。捜査の過程でランダーは、ひとりの協力者を得る。彼は青白い顔の夢想家で、名をエドガー・アラン・ポオといった―青年時代のポオを探偵役に迎えた、詩情豊かな傑作ミステリ。
著者等紹介
山田蘭[ヤマダラン]
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
128
物語の舞台が南北戦争からそれほど経っていない時代でのウェストポイント。人物表に出てくる名前が、有名作家と同じ。さて、これは何年に書かれたものかと、半分くらい読んだところで誘惑に負けて調べると…、なるほど。ステキなオマージュの仕方。殺され方も、謎解きも、意味深だったけど、そういうことか。感想は下巻にて。2018/11/09
財布にジャック
63
若き日のエドガー・アラン・ポオを探偵役にしていることを知り、どんな小説なのか興味を持ちました。表紙と題名が暗いのでどんな内容なのか不安でしたが、思ったよりはずっと読みやすかったです。詩が出てきたり恋愛がらみだったりとイメージしたものとは違いました。しかし、上手く言えないのですが、ざわざわするような不穏な何かがありそうで、この後下巻を読むのがちょっと怖いです。2012/04/15
ペグ
61
「ミスター・ポー、そこに、思いもよらなかったものが見えたの。」「それは何だったんですか、ミス・マークウィス?」「愛よ」と、あのひとは答えました。1830年、陸軍士官学校で起こった殺人事件。捜査の助手になったポーの報告書は熱を帯びロマンティックだ。もしポーに興味のないかたにとっては冗長に感じられるかも。骨相学(ボウボウ博士)、ジョン・ハンター教授の名前も出てきて嬉しい(マークウィス医師)。等、再読だけどもう一度楽しんで下巻へ。2018/02/15
藤月はな(灯れ松明の火)
59
再読。長らく、品薄状態でしたがNetflixで映画化した為、再版するようになったのかと思うと矢張り、嬉しい。ランダーの手記に潜まれた事実に唸りつつも、これが全てが終わった後に記されていると思うと哀しさで胸が締め付けられる。そんな中で助手のエドガー・アラン・ポオのはねっかえりに見えてまだまだ、純朴でロマンチストな所に和みます。しかし、視野狭窄的な手紙には時折「落ち着け、ポオ!」と忠告したくなりますが(笑)ポオ作品好きな人や歴史に詳しい人は作品に忍ばされたオマージュや遊び心にニヤリとする事、間違いなし。2023/02/25
藤月はな(灯れ松明の火)
44
陸軍士官学校で奇妙な死体が発見された。その吊るされた死体には心臓がすっぽりとなかったのだ。この謎を解くために引退した刑事、ランダーに協力するスパイとして活躍するのは若きエドガー・アラン・ポー。暗号、悪魔学、詩、頭蓋骨判断、「リージア」めいたヒロインなどポー作品の要素をふんだんに散りばめた謎の数々にうっとりし、途中で挟まれる新聞記事や二人の手紙にニヤリ。ポウポウ教授の市民革命のルソーなどに代表される「自然に帰れ」という西洋至上主義の博物学論からの「高貴な野蛮人」に対しての痛烈な皮肉に時代を色濃く、感じます。2013/03/10