内容説明
ソ連が消滅し、大戦がナチスの勝利に終わった1960年、ファシスト政治が定着したイギリス。イギリス版ゲシュタポ・監視隊の隊長カーマイケルに育てられたエルヴィラは、社交界デビューと大学進学に思いを馳せる日々を過ごしていた。しかし、そんな彼女の人生は、ファシストのパレードを見物に行ったことで大きく変わりはじめる…。すべての読書人に贈る三部作、怒涛の完結編。
著者等紹介
茂木健[モギタケシ]
1959年生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
86
エルヴィラが『ゲーム・オブ・スローン』のサンサに被さって仕方なかったです。サンサよりも虚栄心と鼻持ちならない傲慢さは薄めですが、育て親の立場を出せばいいという言動が軽挙過ぎて何度も「カーマイケル、エルヴィラを甘やかし過ぎだよ!」と叫びそうになりました。だけど、ベッツィとレジナルド夫妻が良い人で本当に良かった・・・。一方でジェイコブソンが最後にそういう行動を取ってしまった理由を思うと遣る瀬無い。ユダヤ人であるために英国人扱いもされず、命の保証もない中、カーマイケルの疑いのような事を受け止め続けるのも辛いよ。2017/08/17
kasim
32
三部作の完結編、堪能した。1960年、英版ゲシュタポの指揮官となったカーマイケルは裏で無辜の人々を国外に逃がしている。かなり無理筋だが、この設定がかっこいい。このために前二作があったような。これだけで2,3冊書けるのにもったいない。ソ連・米は独に原爆を落とされ、残ったのは独英日。そんな世界で育った若者には「ファシズム」はごく普通の日常、むしろ愛国でちょっとかっこいいもの。仕掛けと知りつつ前半はイライラする。最後はデウス・エクス・マキナ感ありますが、エンタメなのでこれでいいです。 2021/05/06
星落秋風五丈原
31
現実とは異なりソ連が消滅しアメリカが敗北したこの世界では日本は基地を国内に置くどころか「アメリカを分けてしまおう」とイギリスに持ちかけるほど羽振りが良い日本。「核の抑止力によって平和を保つ」という、某国が日本に原爆を落とした言訳のような持論をとうとうと述べる。もちろん被爆国である我が国が、現実にこのような事を言うなどあり得ない。しかし、もしあのまま一度も戦争に負けることがなかったら、これくらいの台詞はためらうことなく言っていたのではないか。過ちに突き進む姿はフィクションの世界だけであって欲しい。 2015/02/24
鐵太郎
19
アメリカが起こしたイラク戦争にあたり、ブッシュのプードルとまで罵倒されたブレア首相のアメリカへの盲従ぶりに対する怒りが、作者がこのシリーズを書いたきっかけだったのだそうな。勝てるかどうかはともかく、歯を食いしばって戦えば負けない戦争が出来たはずなのに、さっさと白旗を上げてナチスにすり寄ったこの世界のイギリスのていたらくは、この反映らしい。そう考えると、特に第二巻の自虐的な描写はまさしく作者の怒りの表れだったのでしょう。三巻通して読んで始めてわかってきたのはちょっと遅いかもしれません。(反省)2010/12/26
もち
18
「では、半クラウンぐらい?」◆女王への謁見を間近に控えた少女。ファシスト賛美のパレード見物をきっかけに、彼女はイギリスの闇へと呑み込まれていく。監視隊隊長に降り注ぐのは――。ファージング事件とハムレット事件で、踏み砕かれた思念の欠片。■三部作の最終幕。SF・諜報要素に加え、家族小説の趣が強くなった。改変された世界が至ったのは、過去作の別解とも呼ぶべき地点。真っ新な大団円とは言えないけれど。小説世界を丸々使って、捻り出されたメッセージは力強い。2017/10/24
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