内容説明
偉大なる名探偵シャーロック・ホームズと、彼を助け、その活躍譚をまとめたジョン・H・ワトスン博士。世にその名を知らぬもののない二人であるが、彼らについてわかっていることは驚くほど少ない。シャーロキアンとして知られるジューン・トムスンが、ワトスン博士の書き残した事件簿と当時の歴史的資料を手がかりに、二人の生涯を描き出す。ファン必読の“ノンフィクション”。
目次
ホームズとワトスン
ホームズ
ワトスン
出会い
緋色の研究
ベーカー街時代
敵と味方
出会いと別れ
醜聞と再会
結婚と友情〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
24
1990年代になって、コナン・ドイルの版権が切れるとともに、新たにホームズ研究が再燃し、いくつかの著作が発表されました。その中で、「伝記」の形式のものとしては、この作品がまさに白眉ではなかろうか。──万能の天才ではなく、我が儘で自己顕示欲に満ち、人の賞賛を求めつつ、人とのつきあいを嫌悪し、なおかつ人のぬくもりに飢えていたホームズ。気まぐれで無頓着、自儘に生きることを望みつつ社会への義務感を抱き、人を思いやる心が第二の天性だったワトスン。こんな描き方もあるのか。ホームズとワトスンのファンには必見の伝記です。2005/02/15
しんすけ
17
ジューン・トムスンはシャーロッキアンだ。それもシャーロッキアンには少ない女性なのだ。今では女性シャーロッキアンは十指で数えるくらいは居るらしいが、本書の初読時は、トムスン以外にはドロシー・L・セイヤーズが記録されているに過ぎなかったかと想う。 シャーロッキアンには細かい事象に神経質な人が多いのだが、彼女はその点おおらかである。 日時の食い違いなどはワトスンの書き間違い程度に考えて、ホームズとワトスンの時系列を追っていく。もともと推理小説作家のトムスンだから研究者と違った核心を把握できているようにさえ思う。2020/11/30
きら
6
ジューン・トムスンらしく、丁寧に書かれたホームズとワトスンの研究書。 読みごたえがありました。2021/03/08
雪下睦月
6
徹底して突き抜けちゃった本気の“ノンフィクション”素晴らしき勘違いに作者の心意気を感じる。読み進めるうちに顕現する作者のワトソン愛は、駄目な男に翻弄される可憐な友人に心底同情し、シャーロックてめーいい加減にしろやと激高する女友達の様です。然し乍しかめっ面しいおじ様方からこれだから女は‥と云うお言葉を頂戴しないのは、彼女の卓越した緻密な調査能力と、機知に富むユーモアが素晴らしいから。最高傑作と呼び名の高い、女史一連のパティシュも何とかして読まなきゃ。2013/10/20
ぽま
6
再読。ホームズとワトスンに関する、正統的な伝記書かつ研究書。同じく伝記を謳うベアリング・グールドの『ガス灯』に比して、非常に説得力のある考察を展開している(グールドの説も一字一句に典拠は存在するものの、取捨した内容が必ずしも頷けるものばかりとは限らなかった)。特に、後期の二人の関係性についての着眼が興味深く、独自性を感じられた。この本を読んでから正典(特に『最後の挨拶』や『事件簿』)を読み返すと、また新たな発見があるかもしれない。2012/10/15