内容説明
マンハッタンにその年最初の雪が舞った夜、ウェルズは一人の著名な海外通信員に出会った。何やら奇妙な連帯感を覚えたあげく、ホテルまでつきあい、つぶれるまで呑んだが、翌朝、相手は謎の闖入者の手で殺されてしまう。酩酊して耳にしたエレノアという名を手がかりに、通信員の過去に分け入る敏腕記者ウェルズ―。彼が見た、愛と裏切りの記憶とは?傑作ハードボイルド第二弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白玉あずき
42
ひとひらの雪が舞い降りてマンハッタンの歩道に灰色のしみを作る冒頭の描写から、ぐっと心を掴まれてしまう。全体を包むハードボイルドの詩情、ロマンティシズム。いいねぇ。不健康きわまりない主人公が、若い殺し屋と互角に闘えるという非現実的描写は、この詩情に免じて忘れてあげよう。コルトとウェルズという似通った二人の男にとって、「エレノア」とは何だったのか。生涯かけて追いかける「男」にとっての妄執(幻)の意味を考えながら読了。密売人レスター・ポールの筋の通し方も、犯罪者ながらいいなと思うのだった。2018/07/26
hit4papa
37
新聞記者ウェルズシリーズ第二弾。目の前で刺殺された海外通信員コルトの事件を追うウェルズの活躍を描いています。コルトが死を迎える前につぶやいたエレノアという名。ウェルズは、真相を探るうちに、見たこともないエレノアに想いを寄せてしまうという展開です。新聞記者魂のなせる技なのでしょうが、そのせいでパートナーとぎくしゃくしたりなど、中年の悲哀を感じてしまいますね。前作より暴力沙汰が増え、ハラハラドキドキのハードボイルド感は高まっています。ただ、犯人は同じパターンで、ああ、この人ね、と判明して驚きは少ないのです。2019/07/24
しゃお
28
【再読】〈ジョン・ウェルズ〉シリーズ2作目。雪が降るマンハッタンでウェルズは紛争国の取材で有名な記者コルトの死の真相と、彼が最後に口にしたエレノアという女性の事を追う物語。ウェルズ自身が殺し屋に狙われる中で、顔も知らず存在自体が幻のようなエレノアに取り憑かれる姿は、ウェルズの事件記者としての矜持、存在意義を確かめるかのよう。しかし、幻の女にそこまで入れ込んでしまうのはいくらなんでもチャンドラーが可愛そう過ぎるし非道い男だ(笑)。また、コルトの別れた妻の事を思うと切なくもあります。2019/04/02
bookkeeper
24
★★★★☆ 再読。シリーズ第2作。著名な戦場記者と知り合ったウェルズだったが、彼は飲み明かした翌朝に殺害されてしまう。手掛かりは、革命のあったアフリカの小国にいた、女性宣教師の名前のみ…。 宿敵ワッツと味方のゴットリーブなどが登場。ウェルズを慕うランシングの出番は少ない代わりに、恋人チャンドラーとの関係に重大な出来事が。泣くのが下手で懸命に泣き声を堪えようとするチャンドラー…。彼女が必死に言葉を紡いでいるのにウェルズは上の空。ひどい。そして切ない。過去に囚われた男たちの叙情的な物語。もう酔いっぱなし。2018/11/30
Shimaneko
14
ダイ・ハードな事件記者が主人公のハードボイルド。誰かの書評で気になってたんだけど誰だっけ。こないだ久々にマンハッタンを歩いてきたばかりなので、街の情景が目に浮かんで楽しさ倍増。脇役だけどコルトの元妻の心情が痛々しくも一番リアル。2016/09/03