内容説明
晩秋のグランド郡で同じハイスクールの生徒が3人、相次いで自殺を遂げた。『ニューヨーク・スター』の記者ジョン・ウェルズは単身取材に赴くが、一人娘をやはり自殺という形で喪っている彼には、苦いインタヴューの連続となる。だがそんなウェルズの前に、事件はやがて、意外な真実を明らかにしていった…。敏腕記者の苦汁に満ちた闘いを描く、話題のハードボイルド第一弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
44
高校生の連続自殺を取材する新聞記者の活躍を描くハードボイルド(なの?)です。自身も娘に自殺されてしまった過去を持つ主人公。取材を通して辛い過去に折り合いをつけられるのか。自殺者の親族の協力の上で書き上げた記事が上司に改ざんされ、主人公はその街の住民らを敵に回してしまいます。愛用のタイプライターを頑固に使うやもめの中年記者が、不屈の思いで掘り起こした真相はそこそこ予想外です。ソリの合わない上司、主人公に気のある女性記者等々の関係を含め、事件後の主人公の人生が気になります。ウェルズシリーズ第一弾です。2019/06/14
しゃお
39
なんとなく思い立ち再読。時代の波に逆らいタイプライターを愛用する敏腕新聞記者ジョン・ウェルズ。そんな彼が上司に押し付けられるように取材する事になるのは高校生3人が立て続けに自殺した事件。残された遺族に取材するウェルズも娘を自殺で失っている痛みを抱えており、残された者の哀しみと悔恨の念が全体を覆います。事件は思いがけぬ形で真実が見えてくる中、若者が抱く生きる事の懊悩がウェルズが過去とようやく向き合えるようになる様子がまた切なくもあります。小気味良い同僚との会話も魅力的な傑作シリーズ。残りも再読しようっと。2019/03/25
Kajitt22
38
1990年代のハードボイルドサスペンスミステリー。当時年間ベストミステリー等の載った雑誌はチェックしていたはずだが、この作家は記憶になかった。しかし、娘が自殺した経験を持ち、それが引き金で妻と別れたニューヨークの敏腕新聞記者が連続自殺事件を追うという辛い内容だが、サスペンス色が強く主人公の葛藤がリアルでなかなか楽しめました。2022/01/31
白玉あずき
31
原作1988年。新聞記者の矜持、田舎町の雰囲気、人々の価値観、確かに古い感じは否めないが、それでも面白くて一挙読み。好きです、この世界の抑えた渋さ。新聞記者さんにしては危険で無謀なことをする主人公。自殺念慮のある少年に語る「人生って」は、この作品全体の一番の読みどころ。作りすぎの感もあったが、ここは素直に主人公の誠実さに感動したい。シリーズ続編入手しなくちゃ。2016/12/30
bookkeeper
29
★★★★★ 再読。立て続けに3人の高校生が自殺した田舎町に調査に訪れた記者ウエルズ。彼も娘を自殺で失っており、否応無く自身の苦い過去と向き合うことになるのだった。 頑固で皮肉屋なウエルズ、彼を慕う美貌の後輩ランシングやお人好しのマッケイなど、生き生きとした人物造形と人生の哀感が胸に迫る傑作シリーズ。今作では娘からの最後の手紙や、一時期だけ付き合ったチャンドラーとの再会が泣ける。 時の流れで忘れ去られるには惜しすぎる。彼らには今でもどこかでスクープを追っていてもらいたい。全4作でボリュームも頃合い。2018/10/09