出版社内容情報
マーガレット・ミラー[マーガレットミラー]
著・文・その他
吉野美恵子[ヨシノミエコ]
翻訳
内容説明
ロンの妻が最後に彼を見たのは、四月のある晩のことだった。前妻の件で諍いをした彼は、友達の待つ別荘へと向かい―それきり、いっさいの消息を絶った。あとに残された友人たちは、浮かれ騒ぎと悲哀をこもごも味わいながら、ロンの行方を探そうとするが…。自然な物語の奥に巧妙きわまりない手際で埋めこまれた心の謎とは何か?他に類を見ない高みに達した鬼才の最高傑作。
著者等紹介
ミラー,マーガレット[ミラー,マーガレット] [Millar,Margaret]
1915年、カナダのオンタリオ州生まれ。38年、高校の同級生であったケネス・ミラー(ロス・マクドナルド)と結婚。41年The Invisible Wormで作家デビュー。『狙った獣』で56年にMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀長編賞を受賞し、83年にはMWA賞グランドマスター賞を受賞する。94年没
吉野美恵子[ヨシノミエコ]
1944年生まれ。日本女子大学英文科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
背古巣
46
実際に読んだのは"早川"の方です。登場する人物それぞれが(端役に至るまで)「なんて自分勝手なんだろう」と思い、イライラしながら読みました。個人主義の人々とのメンタリティーの違いなのでしょうか?最終盤になって、物語の様相がガラリと変わり、事故(?)から事件に…。びっくりです。題名の理由がなんなのかと、ずっと思っていましたが、結局解りませんでした。不思議な読書でした。2022/10/11
mii22.
43
3組の友人同士の夫婦。ある晩夫達は資産家のロンが所有するロッジで会う約束をしていたが、そこにロンは現れなかった。失踪してしまったロンは親友ハリーの妻セルマとなにやら怪しい関係らしい。徐々に明らかになってゆくロンの足どり...。残された妻エスターや友人達の心情が巧に描かれているため、人間ドラマとして面白いがミステリーとしては大きな事件も起こらないので地味な感じにも。しかし、このままでは終わらない何かあるはずと考えた時、真相に気付いてしまった!どんでん返しの一行に、やっぱり!でも面白かったかな。2015/09/27
みっぴー
42
このミラーという作家は、油断させるのが上手すぎる。油断というか、刷り込みですかね。物のたとえですが、崖下に落ちてから「気を付けて」と言われるような衝撃。唖然としすぎてラスト近辺を五回くらい読み直し。で、また始めに戻って唸るパターン。友人とロッジに集まる予定だったロンが、何故か姿を見せない。。。家には妻と子供が二人。家出する理由もなく、、、。一本の電話が、全てを変える。昼ドラと思って油断して読んで戦慄してください。2018/09/15
藤月はな(灯れ松明の火)
42
読友さんの感想がきっかけで読んだのですが、確かにこれは物悲しくも精緻。一人の男の失踪から友人たちの捜索が進む中、明らかになる失踪した男が解決を放置し、引き起こした問題とそれの露見によって静かに崩壊していく人間関係という眩暈のような現実が迫る。でも最後まで読むと驚かされる展開。そして特質すべきは、その経緯が無駄なく、描写されていたことである。読み進めていくと、ロンの今の妻で高慢なエスターが健気に、ハリーの妻、兼ロンの不倫相手の夢見がちなセルマがお株を下げまくったのが印象的。2014/01/28
うまる
37
【マン読:風5】ミステリの前にしっかり読ませる人間ドラマがあるのが素晴らしいです。劇的な事件が起こらなくて、地味ではあるんだけど、退屈ではありません。そして終わってみれば、ミステリであることは間違いないという作りに、これまた凄いなと思いました。終盤までに、主要人物それぞれの人生を語れるくらいの描写がある事が、活きてるんですよね。うーん、凄い手腕だ。ラストの少し切ない余韻も好ましく、良い物を読んだなぁという読後感です。2022/10/22