内容説明
チャーリーが殺された。毒舌が得意で、事あるごとに周囲の神経を逆撫でにしていた男、それがよりによって、唯一の親友が結婚する朝、撲殺体となって発見されたのだ。日頃の言動ゆえ容疑者には事欠かなかったが、いざとなると、明確な殺意は杳として浮かんでこない。だが捜査が行きづまるかに見えたとき、事件は意外なところからほぐれだした…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
89
【ウェクスフォード警部】シリーズ第4弾。結婚式の付き添い役の男が、式の朝に撲殺体で発見される。発見者は犬の散歩に来ていた、ウェクスフォード警部であった。レンデル氏の特徴である心理描写の醍醐味は味わえるのだが、それだけに事件よりは人間描写が中心に感じる。犯人は誰かという推理よりも、周りの登場人物の個性や心の闇が細かく描かれているからである。しかし本シリーズはたいへん読みやすく、面白いなと実感出来るだろう。謎解きの考察もレンデル氏らしく、事実の順序だてに少々の推理を必要とする形は、私にはとても好感を持てる。 2020/03/17
hit4papa
35
ウェクスフォード首席警部シリーズ④。トラック運転手撲殺事件を追う警部が、一見無関係と思われた不可解な交通事故との関連を看破するというミステリです。皆に疎まれ数多の容疑者が存在する被害者。人の悪意の描写は流石、レンデルです。シリーズを追うごとに、事件は複雑な様相を呈してきました。足で解決より推理に重点がおかれています。本作品では、警部と娘の微妙な間柄など家庭生活も描かれて、警部のキャラもかたまってきたようです。シェークスピアがやたらと引用され、ジョークは皮肉たっぷりという英国ぽいミステリに仕上がっています。2019/04/08
bapaksejahtera
11
「死が二人を別つまで」に続き著者作品二作目。既読は事件推理に当たるのが警察ではない異例の展開だったから、シリーズ主人公の捜査を初めて読む。独身最後の男を囲むスタッグパーティーに遅れてやってきた花婿の親友の男が札びらを切る開幕。その帰路、男は何者かに撲殺される。他方同じ所管地域では、高速道路で死亡事故があり、運転者の男が死に娘と見られる女性が死んでいた。同乗し乍ら生き残った妻は意識混濁の中、他に同乗はなかったと証言。羽振りの良い親友の男の金の出所を求め捜査を進める中2つの事件は繋がる。題名同様ピンと来ぬ作品2024/11/16
Ribes triste
11
ウェクスフォード警部シリーズ。発端は収入以上に金まわりのいいトラック運転手の殺人事件と車両火災で1人が生き残る死亡交通事故。事件の推理より、事件関係者の心の闇の描写が強烈で、そちらに心うばわれる。推理がいささか直感的過ぎるウェクスフォードに対して、実証派の部下バーデンですが、実は良き相棒なのがいい。2016/12/14
Tetchy
5
メインの被害者となるチャーリー・ハットンの、周囲の人々に与える嫌悪感がレンデルにしては描き込みが足りず、薄味だったように思われる。2つ目の事件がハットン殺害事件に結びつくのは容易に想像できたが、犯人役の設定手法はいかにもレンデルらしい。今回感心したのは、キングズマーカム署に備え付けられたエレヴェーターの使い方。この小道具をコミカルに、そして有意義に活用している手際は見事。2009/03/20