内容説明
男はいつも、フォード・ゼファーに乗って現れた。夫の留守中、いそいそとその男を迎え入れるルイーズのことを思うと、隣りに住むスーザンの心は痛んだ。夫に愛人ができた結果、捨てられた過去をもつ彼女としては、かつての苦い経験が思い出されてならないのだ。そんな心の振幅が、やがて自らを、渦巻く詭計の中へ導こうとは夢にも思わずに…!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
13
デビュー間もない頃のノンシリーズ作品。離婚して子供を抱える若い寡婦は心の傷尚癒えず、夫と住んでいた家に、口さがない隣人との付合いを避けて暮らす。寡婦の隣家に住む妻は出入りの電気設備の人間と不倫を重ねていると、近隣で専らの噂。寡婦は隣家で二人の死体を発見する。本件は不倫関係清算の無理心中事件として処理される。寡婦に接近を図る「不倫妻」のハンサム夫。怪しい心中事件に疑念を持つ刑事が登場するのはかなり経ってから。寧ろ「無理心中」男の友人が専ら素人探偵で動く。レンデルの心理劇は結末をスッキリ明示しないのが心残り。2025/03/20
Ayah Book
13
美貌のシングルマザーがヒロインのサスペンス。筋書きはまぁ単純といえば単純なんですが、それを読ませるレンデルさんの筆。レンデルさんの作品はストーリーは意地悪なんだけど、登場人物にはあんまり嫌なやつはいない気がする。悪役も、まぁ、悪いんですけどね。。。なんかフランス映画みたいにオシャレ感ありますよね。イギリスですけど。2021/08/02
おくちゃん
9
久々のルース・レンデルでした。レンデルらしいドロドロした心理描写というか人間関係が楽しめます。2021/08/15
Tetchy
8
よく出来た話だとは思う。最後に明かされる真相は神経衰弱で裏面のカードが一気に裏返させられたような鮮やかさを見せるのだが、文体自体が抑制が効き過ぎて情動を起こさせないのだ。結末も唐突な門切調で終わるような感じだ。確かにあれ以上書く事は蛇足になるんだろうが、もっと他の締め括り方があったのではなかろうか?2009/03/15
hit4papa
7
隣家の不倫心中事件にまきこまれてしまった女性を描く心理サスペンスです。事件の真相については想像に難くありませんが、心理描写については絶妙です。心の内をしっかり描いていないと、相当つまらない作品になったでしょう。レンデルならではですね。