出版社内容情報
女流詩人キルスティンの死は、彼女が遺したという詩「殺す鳥」と関係が? 娘のサムは、詩の所在と母の死の真相を求めて動き出す。実力派作家がつむぐ英国ミステリの逸品。
内容説明
夏のコーンウォールで、女流詩人キルスティンは死んだ。バスタブの中、裸で。自殺という検死審問の結論に、娘のサムはただひとり異議を唱える。本当に自殺なら、母の日記と、詩集の表題作になるはずだった詩「殺す鳥」はどうして見つからない?消えた日記と詩を探すサムの行動が、事件に新たな局面をもたらす…。心理描写に長けた英国の才媛が贈る、サスペンスに満ちた逸品。
著者等紹介
神林美和[カンバヤシミワ]
翻訳家。東京都出身(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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GaGa
57
一気読み。面白かった。横溝正史ばりのイギリス版ドロドロ家族模様に合わせて、詩人だった母のダイニングメッセージの要素、さらにはミスリードの散らし方などが非常に上手く、ミステリーとしては完璧ともいえる仕上がり。さらに、タイトルを意味する描写が、作品の前半に、登場人物の実体験で出てくるところなどは素晴らしかった。多視点が苦手な人には読みにくいかとも思うが、ミステリー好きなら読んで損はない傑作!2012/06/17
藤月はな(灯れ松明の火)
36
女流詩人の実母が亡くなり、自殺として処理された。母が出版するはずだった詩集と日記が無くなっていることに気づいた主人公は殺人として調査を行うが・・・・。登場人物に誰一人として共感できないのですが、私も嫌なことは見ないふりしてやり過ごすなど、登場人物の性質の断片を持っているので余計に嫌悪感が募ります。そしてどんなに憎悪し、破滅することを望んでいてもその感情自身も人を縛り、同時に縛られたがるように仕向け、それぞれが役割を抜け出せずにずるずると腐ったように関係を続けている「家族」についての描写が怒涛のように打つ。2013/01/22
tom
24
主人公がチェロ弾きということで図書館に注文。でもまあ、チェロを弾くという部分は、ラッパでもピアノでも尺八でもよろしいという感じ。もう少し、音楽的場面があったら嬉しいのにというところ。ここは残念。でも、ストーリーはなかなか凝っている。奇妙に固い訳文にもマッチしている感じ。家族のおどろおどろしさが最後まで展開を追わせるというミステリー。でも、読み終えてしまうと、そうでしたかという感じになってしまう。まあ、今どきのミステリーなら、こんなものかという読後感。10点満点の7くらいか。2017/06/15
しろ
13
☆7 いいミステリだった。一人の女流詩人の自殺をめぐって、意外な方向に話が持っていかれる。何かを隠す夫、真相を求める娘、死を悼む親戚、それらの人々を生き生きと描いているからじっくり読める。そして「殺す鳥」とは何を指すのか、表面的な意味でも、真相的な意味でもとても興味深い言葉。最後まで読むと、伏線が巧みにはっていて、見事に展開しているのがよくわかる。すっきりとは終わらない感じのラストもいい感じ。骨太で良質な作品だった。2012/07/15
混沌工房
7
タイトル&装丁に惹かれて買い。最初、人物関係でとまどったものの(ヒロインの継母だの元義父だの何だの)、おおむね読みやすく、楽しめた一冊。 ヒロイン・サムの本名であるサムファイアがハーブの一種だということで、ネットで調べてみた…写真見たら、思っていたより、可愛くない植物だった(笑)。2012/08/02