内容説明
ロンドン塔の城守、ラルフ・ホイットン卿が塔内の居室で殺された。卿は数日前に届いた手紙に、異常なほどおびえていたという。その後も、同様に手紙を受けとった者たちのもとを、死が相次いで訪れる。それぞれ悩みを抱えながらも、姿なき殺人者を追うアセルスタン修道士とクランストン検死官…。クリスマスを控えた極寒のロンドンに展開する、中世謎解きシリーズの傑作第二弾。
著者等紹介
古賀弥生[コガヤヨイ]
東京女子大学文理学部英米文学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ペグ
62
再読。1377年、テムズ河も凍る12月、不吉なロンドン塔で起こった殺人事件。解説の千街晶之さんの解説にロンドン塔の事が詳しく書かれていて興味深いです。ミステリーというよりも人々の営みが愛おしい。翻訳されているのはあと一作。もっと訳してほしいシリーズです。2018/02/03
syaori
60
14世紀ロンドンが舞台のミステリー第二弾。ドミニコ会修道士アセルスタンと検死官ジョン卿がロンドン塔の城主殺害事件に挑みます。城主の過去などから、十字軍、暗殺教団(山の老人)、ムーア人、医学と、十字軍を機にイスラム圏の影響も入ってきていた中世らしい単語の並ぶ巻でしたが、同時にこれから5年も経たないうちに起きる農民反乱ワット・タイラーの乱に多大な影響のあった僧ジョン・ボールが登場したりと、封建制から近代へ移る混沌とした時代が垣間見えるのも興味の惹かれるところ。歴史物としても面白いので、続きも翻訳してください!2023/08/18
ペグ
48
一作目から半年後、テムズ川も凍る真冬のロンドンが舞台です。複雑な事件の他に、クランストンとアセルスタンはそれぞれに問題を抱えていて、意思疎通がうまくいかず、読んでいるこちらもハラハラしてしまいます。暗く不吉なロンドン塔、そして相変わらずアセルスタンの周りのチャーミングな人々が小説の中で生き生きと動き回ります。千街晶之さんの解説もとても面白く読めました。ところでボナベンチャーは黒猫ではなくて、白黒猫でした。建石修志さんのカバーイラストも素晴らしいです(^_^)v2017/02/03
ぽんすけ
19
検死官・修道士コンビ第二巻。気づくのが遅すぎだけど、このシリーズの前に読んでたミステリー本が、プランタジネット朝の始まりヘンリー2世治世下の話で、このシリーズがリチャード2世の時代ってことはプランタジネット朝の最後ってなんか感慨深いな。王朝の最初と最後の空気間の違いがはっきりしていて楽しい。で今回はあの有名なロンドン塔を巡る連続殺人だったわけだけど、被害者達は自業自得な気がして仕方ない。特に最初の被害者。絶命までさほどかからなかったろうから陥れられ悲惨すぎる死を辿った犠牲者に比べあまりにも楽すぎる死だ。2024/09/24
蜻蛉切
19
アセルスタン&クランストンのコンビシリーズ第二弾である。 中世の生活臭漂うロンドンが舞台であるが、今回は真冬とあって「臭い」は抑え気味か? 十字軍絡みの殺人事件がテーマだが、割と早めのネタバレもあって、ミステリとしては物足りなかった。 それよりも、凍死や縊死、絞首刑といった無残な死の数々が印象的。 また、この時代の教会の在り様が、医学を始めとした科学の進歩を阻害していたことがチラリと触れられている。 この時代ヨーロッパは世界の片田舎であり、イスラムのかなり後塵を拝していた訳だからなぁ。 瀉血とか嫌だなぁ。2018/08/03