内容説明
1377年、ロンドン。富裕な貿易商トーマス・スプリンガル卿が、邸の自室で毒殺された。下手人と目される執事は、屋敷裏で縊死していた。トーマス卿の部屋の外は、人が通れば必ず“歌う”、通称“小夜鳴鳥の廊下”。この廊下を歩いた者は、執事ただひとりなのだが…?難事件に挑むは、酒好きのクランストン検死官とその書記、アセルスタン修道士。中世謎解きシリーズ、堂々の開幕。
著者等紹介
古賀弥生[コガヤヨイ]
学校女子大学文理学部英米文学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ペグ
68
再再読。ここのところ集中力がひどく低下していて各駅停車の電車に乗っているが如き読書。それが功を奏したのでしょうか?ディテールを読み込んで、楽しかった。特に序章は不気味で美しく、ジョン オブ ゴーントの思いが悪魔になってスプリンガム邸に入り込むくだりは圧巻です。そしてクランストン〜以外や以外!剣の達人でした!流石、ただの酔っ払いではなかった。そして次の国王になったのは10才のリチャード オブ ボルドー〜後のリチャードII世?(何年か前に観たレイフ ファインズを思い出しながら)2018/01/20
syaori
63
百年戦争の時代、エドワード三世の死により即位した王はまだ幼く、叔父ランカスター公を擁立する動きもあるという風雲急を告げる英国が舞台のミステリー。公の依頼で有力な貿易商の毒殺事件を調べる検死官とその書記のドミニコ会士を中心に物語が進みます。事件は主人公二人や殺された貿易商、公の秘密と弱点、罪をめぐって展開し、それに14世紀ロンドンの猥雑さやプランタジネット朝からランカスター朝へ移る政局が絡み様々な意味で目が離せません。本書はシリーズ第一作で、意図せず国政に関る秘密を知った二人の今後の活躍に期待が高まります。2023/06/12
ペグ
55
何年ぶりかの再読。14世紀ロンドン。いつもクラレットで酔っ払っていて、でも妻をこよなく愛する検死官ジョン クランストンと片耳ギザギザの黒猫ボナベンチャーと暮らす托鉢修道士アセルスタンが事件を解決する。けれどこの小説の魅力は、何と言っても極貧の人々を生き生きと描いているところ。彼等の息遣いや匂いが立ち昇ります。アイルランドのフィデルマとロンドンのアセルスタン!時代小説のヒーローです。古賀弥生さんの素敵な翻訳でこんなに楽しい読書経験が出来たことに感謝です。オススメの一冊かと思います^o^2017/01/27
ぽんすけ
18
エドワード3世からリチャード2世の治世への移行期を舞台にした殺人事件。アル中の検死管と生真面目な修道士(二人とも心に深い傷あり)の一風変わった二人だが、ちぐはぐに見えてこれがなかなかいいコンビである。動機がそこまで必要性のあるものか?と疑問も感じたが、確かに公表されれば国家転覆の一大事になるネタだから欲しい人はいるか。クランストンがデブでアル中なのにキレッキレの剣技を披露するのがツボだった。あと作中で、至る所にロンドン各所の情景描写がなされるんだけど、とにかく汚い、臭いのオンパレードで不衛生すぎて衝撃w2024/09/20
skellig@topsy-turvy
14
中世英国は14世紀ロンドンを舞台にしたミステリ。探偵役は飲んだくれ検死官クランストンと、過去に色々あった修道士アセルスタンというデコボココンビ。金貸し商人が毒殺され、下手人とされた執事も死んだことから事件の幕が開く。美人妻、ゲイ疑惑男、胡散臭い首席裁判官など非常に人間臭い人物揃いの中捜査が進む。中世ロンドンの風俗が非常に生き生き描かれていて、匂いや空気をしっかり感じさせてくれるので嬉しい。悪名高いニューゲート監獄や居酒屋、裏路地の人々が魅力的だが、ちょびっとしか出ない少年王リチャード2世も印象的。2013/04/24