出版社内容情報
法廷弁護士にして裁判官の資格を持つ美貌の修道女フィデルマが難事件を解決する。「ウルフスタンへの頌歌」など全五編を収録。人気シリーズの日本オリジナル短編集第3弾。
内容説明
法廷弁護士にして裁判官である美貌の修道女フィデルマが、鋭い推理で数々の難事件を解決する。聖女の血が入った小瓶を携えた修道女が森の中で無残にも殺された事件「ゲルトルーディスの聖なる血」、ダロウの修道院で学んでいた南サクソンの王子が不可能な状況下で殺害された事件「ウルフスタンへの頌歌」など全5編を収録。人気シリーズの日本オリジナル短編集、待望の第3弾。
著者等紹介
甲斐萬里江[カイマリエ]
早稲田大学大学院博士課程修了。英米演劇、アイルランド文学専攻。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紅はこべ
125
「真実を突きとめるには、どれほどあり得ないと思えても、あらゆる可能性を考慮して、あるいは除去して、探ってゆかねばなりませんわ、お師匠様」これはこのシリーズがホームズの正統な後継ミステリという作者の宣言に思える。この時代のアイルランドの修道院では修道士修道女が結婚できたのか。フィデルマの属している世界は、現在よりも民主的で自由で合理的に見える。「愛と憎しみは同じ卵から孵る」詩人はさすが真実を衝く。2021/03/19
榊原 香織
60
ケルトミステリ短編集3作目 当時(7c)、アイルランドのキリスト教布教者は皆、初歩の護身術を身に着けていたらしく 割と面白い短編集。トリックどうこうより部族の関係とかがエキサイティング2023/03/16
南北
40
短編集3作目。人間の欲望が犯罪を引き起こすのはわかるのですが、かなりえげつない話が出てきたり、他人から財産を奪って豊かになる人たちが多かったりして、そういう人たちと立ち向かうためにはフィデルマのスキルが高すぎるのもやむを得ないとも思いますが、もう1つ納得感につながってきません。真相の解明にもハッタリを使ったりするところもどうかと思います。何やら否定的な感想になってしまいましたが、最後の短編「ウルフスタンの頌歌」だけは密室殺人の要素があって面白いと思いました。2022/02/06
鷺@みんさー
34
ちゃんと伏線ありのものもあるんだが、「それって牽強附会ってか、もはや根拠のない告発は名誉毀損では?」と思うものもあり。勘だけでかまかけて、あんだけ自信満々に証拠を提示するフリをするフィデルマは、敢えて突き抜けた(メタ的な)探偵ならともかく、古代アイルランドの「弁護士」としてはどうなのか。この作品はファンタジーとして多めに見ればよいのか、しかし私は、この時代のブレホン法などの論理的なシステムが興味深くて読んでいるので、短編だとあまりの傍若無人が目立つ。密室殺人の話は良かった。孤島の僧院のグロさも好み。2021/12/23
ぽんすけ
25
フィデルマの短編って長編とはまた全然違う面白さがあるな~。長編のあのスルメのような癖になる感じもいいんだけど、短編集の切れ味良い構成とかうまいなと思う。ミステリーの背景を、歴史に根差した詳細な事象で埋めることで読者は当時の社会のリアルさを肌で感じれるし、事件とはどうしても切り離せない生々しさもあって私は好みだ。神の僕たる聖職者であっても一皮むけばギラギラした欲得が現れるところ、地域や国を跨いでの陰謀や憎しみそういうものが、短編集だと冗長な所がなく、また短すぎもせずうまく表されている。次巻の長編も楽しみ2023/01/07