内容説明
法廷弁護士にして裁判官の資格を持つ美貌の修道女フィデルマが解き明かす事件の数々。宴の主人の死の謎を探る「毒殺への誘い」、殺人犯にされた修道士を弁護する「まどろみの中の殺人」、競馬場での殺人を扱う「名馬の死」、孤島での修道女の不可解な死を調べる「奇蹟ゆえの死」、キルデアの聖ブリジッド修道院での事件を解く「晩祷の毒人参」の5編。日本オリジナル短編集第2弾。
著者等紹介
甲斐萬里江[カイマリエ]
早稲田大学大学院博士課程修了。英米演劇、アイルランド文学専攻。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
306
フィデルマのシリーズは2冊め。この巻は5つの短篇を収録。7世紀半ばのアイルランドを舞台に物語が展開するこの風土感と歴史の重みがあってこそのフィデル・シリーズ。今回も健在である。ただ、なにしろ時代の制約を背負っているだけに、捜査は予断とハッタリになりがちであり、現代的なミステリーの持つ緻密さ(例えばスカーペッタのシリーズのような)は、ここにはない。勝負どころが違うのである。その代わりというか、文学の持つ香気といったものが、このシリーズにはある。5篇の中では、解説の川出正樹氏は「晩禱の毒人参」を推して⇒ 2024/03/05
紅はこべ
95
巻頭作の悪意、ホームズもののあの作品を連想。女性の存在感が目立った巻。2020/06/08
榊原 香織
65
ケルトミステリ 短編集の2巻目 殺人の対価が牛なん十頭、ていうのがムムムですが、7cのアイルランドは意外にきちっとした社会だったんだな2023/02/17
鷺@みんさー
32
事件そのものよりも、弁護士(探偵役)としての自身の使命と、キリスト教の教えから発する、人としての情に板挟みになり、若いフィデルマが最後に自身と犯人に下した決断が胸に響いた。正直、このシリーズはミステリとしてではなく、古代アイルランドの風俗を楽しむために半ば惰性で読んでいたのだが、この一作でシリーズ及びフィデルマへの想いが変わった。彼女がなぜ「キルデアの」フィデルマなのか、国のあちこちを行脚しつつ事件を解決し、ブレホン法に頑ななほど忠実に在ろうとするのか、その答えが見えた気がした。2021/11/09
詩歌
21
紀元前7C半ば、アイルランドが舞台のミステリ。生まれついてのものも、自ら手に入れた学識に裏付けされた高い地位も持つ魅力的美人名探偵。はじめ時代背景と法廷弁護士・裁判官の言葉が馴染みませんでしたが、訳註が付いているので親切設計。すると今度は書体の違う文字が口調を変化して朗読されて脳内再生。話毎に登場人物が紹介されていて、最後の話だけ死者の名前が記されていません。何か裏があるんじゃと身構えて読みました。薬草の香り漂う作品。シリーズ物の短編集と気付かず手を出しました。2014/06/08