出版社内容情報
ピーター・トレメイン[ピータートレメイン]
著・文・その他
甲斐萬里江[カイマリエ]
翻訳
内容説明
女子修道院での調査は困難をきわめた。高慢な修道院長に、敵意に満ちた修道女たち。地方代官と修道院長は、兄妹であるにもかかわらず憎みあっている。さらに地方代官のもとには、修道院長の元夫や、フィデルマの兄であるモアン王と対立している小王の子息らが滞在していた。複雑に入り乱れる人々の感情と思惑。そして第二の殺人が…。好評フィデルマ・ワールド、長編第三弾。
著者等紹介
甲斐萬里江[カイマリエ]
早稲田大学大学院博士課程修了。英米演劇、アイルランド文学専攻。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nat
43
面白かった。これまでの長編よりすっきりとした終わり方だった。エイダルフも無事登場して、次の舞台はキャシェルかな。修道院長は最後まで反省のない高慢さだった。このシリーズの解説は?なものもあるが、田中芳樹さんの解説は思ったより良かった。フィデルマをアイルランド的英知の象徴ととらえるべきという読解に納得。でも少し人間的な変化も見られるとのことで、フィデルマの今後の変化が私も楽しみ!2022/01/29
Hugo Grove
22
再読。今作もイヤなやつ満載。それにしてもこのように憎しみながら普通に生きていけるものだろうか。禍々しい殺人事件とともに大きな企てまでもが透けて見えてくる。たかぴしゃで向こう気の強いフィデルマも作を重ねるたびに大人になっていくよう。辛抱強く事情徴集し、探索を続ける。その過程が面白い。フィデルマが新情報を得驚くたびに、こっちも驚かされる。テンポよく話が展開していくので退屈せずに最後まで楽しめる。エイダルフとのあり得ない再会も、シリーズを続けていくためには…。まあ、再会できてよかったね。2017/06/14
詩歌
17
書き手の"女憎し"は旧約聖書から顕著だと思うんだけど、それを冷静に受け止められない人々が高い地位にある事が気持ち悪い。金持ちや権力者が宗教を利用するのは普遍的なので、嫌悪しつつも仕方ないと対応できる。修道女の若さ故の言動が、もう目に見え耳に聞こえそうなくらい! よろめいたエイダルフがフィデルマにぶつかった場面に思わず「壁ドン!?」となったのには普遍性はありません(笑) 法廷場面があるから読後感爽やかで救われる、憎悪にまみれた物語でした。2014/09/28
Masa
14
読了。相変わらず面白い。上下巻で七世紀のアイルランドが舞台。かつ、馴染みのない聖書からの引用が散見するのにここまでさらっと読めるのは、物語の起伏が乏しいというよりは、筆者・訳者の実力かなと思います。毎度魅せられる解決シーンは、フィデルマを信じて真実を知ることに胸が躍ります。あまり台詞を引用するのは好きではないのですが、以下のそれが、このフィデルマシリーズの最大の魅力を表現しているかと。「私が求めます<弁償金>はただ一つ」「正義が行われ、真実が勝利をおさめるさまを拝見することであります」2016/01/28
shizuca
10
一気に読んでしまいました。ようやく囚われのエイダルフを奪還したフィデルマに拍手。エイダルフ活躍するのかと思ったら、今回はフィデルマの安定剤のように影が薄かったですが、ことあるごとに彼女がエイダルフを回想したり思ったりするので名前だけは目にすることが多かったです。もう少し活躍してほしかったなぁ。犯人はやっぱり!な人だったのだけど、犯人が犯した罪は人として最低だったのでしっかり刑罰を受ければいいかと。聖書やラテン語の記述が多くて、この手の翻訳を手掛ける方はすごいなぁと尊敬します。2015/07/27