出版社内容情報
ピーター・トレメイン[ピータートレメイン]
著・文・その他
甲斐萬里江[カイマリエ]
翻訳
内容説明
女子修道院で、頭部のない若い女性の死体が見つかった。腕に結びつけられた木片には、アイルランドの古い文字オガムが刻まれ、掌には十字架を握りしめていた。事件を調査すべく海路修道院に向かう途中、フィデルマは乗組員がいきなり消え失せたかのように、無人で漂う大型船に遭遇、船内で思いもよらぬ物を発見する。王の妹にして弁護士、美貌の修道女フィデルマの推理が冴える。
著者等紹介
甲斐萬里江[カイマリエ]
早稲田大学大学院博士課程修了。英米演劇、アイルランド文学専攻。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
55
女子修道院で若い女性の首無し死体が発見され、さらに無人の大型船からローマでエイダルフに渡した書籍収納用の鞄が発見される。全く別の事件のように見えてしだいに1つの事件に収斂されていくところは見事だと思う。事件解決を依頼した女子修道院の院長もその下の執事も傲慢でフィデルマに非協力的という強烈なキャラクターだが、これくらいでないとフィデルマの万能感には釣り合わない。さらに第2の殺人事件も起きておもしろくなってきた。2021/03/14
Nat
40
少し高圧的なフィデルマも何だかなぁと思ってしまうが、それ以上に傲慢で性格が悪そうな登場人物が勢揃い。無人で漂っていた船からフィデルマがエイダルフに渡した祈祷書が見つかった謎は何も解決しないまま殺人事件が続き、その謎も解明されない状態で上巻が終了。怪しい人物はたくさんいるが、決め手が見つからない。エイダルフはいったい何処に?2022/01/26
geshi
21
修道院の井戸から見つかった首のない女性の死体の謎と乗員が消えたような大型船の謎、冒頭の2つの大きな謎で興味をひかれる。傲慢な修道院長と執事、悪意を耳打ちする地方代官とその客人たち、周囲が嫌な奴らばかりでフィデルマの伝家の宝刀たる国王の妹という印籠をかざしても有効ではないフラストレーションが溜まる。だからこそ、虐げられている者に脅威が迫ろうとする中で智慧と弁舌で相手をやり込める場面はスカッとした。相手の論理で相手をぐうの音も言わさず叩き潰すのは、主人公感あって好きになっちゃうよね。2024/09/13
ぽんすけ
19
いつも嫌な人が出てくることに定評のあるフィデルマシリーズの長編。はい、今回も本当に性格の悪い人が何人も出てきて、読んでて登場人物にイライラしました。今回の殺人事件の舞台は女子修道院だけど、神様に仕える人達のトップの院長が一番腹立つってどういうこと?この人が犯人だとしても全然驚かないほど嫌な性格。修道院というと清貧とか静穏とか厳かな感じがするはずが、とってもドロドロしていて、暗がりから殺人者がいつ出てきてもおかしくない。今回も人間関係がとても複雑そうだし下巻でどうなるのか?あとエイダルフどうなっちゃったの?2022/12/04
詩歌
17
マリーセレストみたいな出だし。フィデルマの「控えおろう! どなたと心得る!!」は、冒頭に(笑) 身分保障というのは、探偵小説のお約束でもある。正体が露顕すると姿を消してしまう、慎ましやかな存在とは対局。身体的な異形が劣った(悪)ものだとされる流れは、国の内外時代を問わずある。これも普遍的な恐怖心から生じるものだ、それに対抗するのは宗教の仕事。毎回新しいアイルランドの蘊蓄がひとつはあって、嬉しい。2014/09/27