内容説明
斧で殺害し、頭皮の一部を剥ぐ凄惨な殺人。犯人は次々と犠牲者を増やしていった。元法務大臣、画商、そして盗品の売人。殺害方法は次第にエスカレートし、三人目は生きているうちに目を塩酸で焼かれていた。犠牲者に共通するものは?なぜ三人目は目を潰されたのか?常軌を逸した連続殺人に、ヴァランダーらの捜査は難航する。現代社会の病巣を鋭くえぐる傑作シリーズ第五弾。CWAゴールドダガー受賞作。
著者等紹介
柳沢由実子[ヤナギサワユミコ]
1943年岩手県生まれ。上智大学文学部英文学科卒業、ストックホルム大学スウェーデン語科修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
への六本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
378
本書はCWAゴールドダガー賞を受賞しているが、それも当然と思わせる出来栄えである。まず、プロットの展開がスピード感に溢れていて、しかも緊密でいささかも緩むことがない。逡巡するヴァランダーの造形も、一方の犯人のそれもきわめて魅力的だ。もっとも、読後にはヴァランダーとともに哀しみと寂寥感に包まれることになるが。殺人者の行動や心理が途中で語られるのは、息詰まる緊迫感を弱めるともいえるが、追う側と追われる(むしろ行為者なのだが)のサスペンスこそが、この作家の持ち味なのだろう。2018/08/03
遥かなる想い
214
下巻でも、斧と頭皮剥ぎという残虐な犯罪が 続く。一体何のためなのか? バラバラに思えた連続殺人事件が 少女売買を軸に 繋がり始める… ヴァランダー警部の視点にミスリードさせられながら、北欧ミステリーを堪能できる、 そんな下巻だった。2018/05/12
ケイ
113
上巻で犯人のメドはつくし、犯行の原因も予想がつくのだが、それでもどんどん読ませる。警官たちそれぞれの個性もなかなかいい。噂には聞いていたけど、スウェーデンのアルコール依存度は凄そうだ。ヴァランダーも彼の周りの人々も、みんな幸せになってほしいな。好きなシリーズになりそう。2016/11/08
まふ
102
下巻ではさらに公認会計士が殺され、いよいよ殺人犯のやりたい放題状況になって来る。警察陣は不眠不休の捜査を続ける。ヴァランダー警部は少しづつ解決の糸口を見つけ出すが進展は遅く、ストックホルム本庁の敏腕警部のご来駕を仰いだりする。楽しい夏休みも返上してという状況下、事件は急速に進展を見せ、被害者の共通リンクも見え、かくして偏執狂的猟奇殺人事件も「地道な努力」の積み上げによりついに解決する。とは言えしんどすぎる、警察官にはなりたくない…と思わせる作品でした。G1000。2023/07/26
ふう
100
殺した側より殺された側の人間たちがどれほどひどい人間か、読み進むにつれて悍ましさは悲しみへと変わり、涙さえこみあげてきました。始めから犯人はわかっていて、しかも目の前にいる…。警部ヴァランダーの疲労と推理と迫ってくる危機とで、読む方も体力を消耗しそうなほどの重さ、そしておもしろさでした。ヴァランダーの、犯人を憎むのではなく、こんな犯罪が起きる国になってしまった社会のあり方に思いをはせるところが好きです。森と湖と福祉と人権の国。でも、そんな美しい恩恵がまったく届かないところで生きる人々への、作者の思いです。2018/12/09