出版社内容情報
アクランド英国軍中尉はイラクで爆弾によって頭に重傷を負い、片目を喪失する。病院での彼は他人に触れられると暴力的になり、看護師たちを戸惑わせていた。退院後、彼はロンドンに住み始める。だがアクランドともめた高齢の男がその後に何者かに襲われ、彼は警察に拘束される。近隣では、3人の独り暮らしの男性が殴殺される連続殺人が起きていた。アクランドはその事件にも関係しているのか――?〈現代英国ミステリの女王〉の筆が冴え渡る最新傑作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
87
今まで読んできたミネット・ウォルターズ同様に格調高いサスペンスだった。主人公、チャールズ・アクランドは英国軍中尉。イラクで爆弾によって頭に重傷を負い、片目を喪失する。病院での彼は他人に触れられると暴力的になり、看護師たちを戸惑わせていた。そして除隊しロンドンに住み始めるのだが、近隣で一人暮らしの男が自宅で殺される事件が頻発していて、その犯人と目されたのがアクランドだった。近隣では、3人の独り暮らしの男性が殴殺される連続殺人が起きていた。アクランドは何をしたのか?事件が多面的に描写され後半は特に面白かった。2020/06/20
Panzer Leader
77
戦争で重傷を負って帰国した主人公。以前には見られなかった人間不信・女性嫌悪・暴力的傾向の症状が現れる。心配する医師たちをよそに退院した彼は近隣で多発している殴殺事件の容疑者として警察に目を付けられる。彼が犯人なのか、でなければ誰が一体?とのサスペンス風味の心理ドラマ。彼を手助けする女医、捜査に当たる警視、主人公に関わる登場人物たち等サブキャラも個性的ではあるけど、ちょっと冗長かなとも思えた。ところでページ数が実際のページ数と随分違うのは何故?2021/05/13
くたくた
66
《海外作品読書会》間違いなく今年ベストの一冊。キャラクター造形が素晴らしい。1ページしか出てこないような端役まで、その人の面立ちや人生が見えるような個性が醸し出されている。ましてや、主要人物は実に生き生きとしている。主人公チャールズ・アクランドはイラクで受けた爆弾攻撃で左目と供に左顔面を失い、酷い偏頭痛や耳鳴りの後遺症が残る。希望した陸軍への復帰も叶わず、失意のままロンドンに暮らすが、時を同じくして彼の近辺で連続殺人事件が起こり、彼が酒場で起こした乱闘騒ぎがきっかけで、容疑者と疑われて・・・2020/12/26
オーウェン
60
久々のウォルターズの新作。 戦争に派遣されたアクランド中尉が顔に傷を負って帰ってきた。 すると性格が変わったように、アクランドは女性に暴力をふるうように。 そして近隣で起きる連続殺人事件の犯人にアクランドが浮上する。 当該人物以外にも多くの人物が絡んでくるのがウォルターズの特徴であり、そこに社会時勢が絡んでくる。 一応犯人を探すミステリではあるが、そちらは非常にわかり易い。 それよりはアクランドの人物造形が主であり、なぜこういう人格が形成されたのか。 終わり方の煮え切らなさも独特。2021/07/10
kaoru
53
イラクで頭部に重傷を負った青年アクランドはロンドンで連続殺人事件の容疑をかけられる。彼を巡る医師たちや警官は彼と接するうちに次第に事の真相にたどり着いてゆく。「見た目重視」の現代らしい極端な自己愛性人格障害の恐ろしさなど、人間心理の闇を深く掘り下げるウォルターズの佳作。人は見た目とは違った要素を隠していることを思えば「カメレオン」という題には納得がいく。豪放な女医ジャクソンの人間性に救われる。イラク戦争がイギリスに与えた負の遺産など、常に現代イギリスの諸相を描こうとするウォルターズの手腕には感銘を受けた。2020/08/13
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