内容説明
資産家の老婦人、マチルダ・ギレスピーは、血で濁った浴槽に横たわって死んでいた。睡眠薬を服用した上で手首を切るというのは、よくある自殺の手段である。だが、現場の異様な光景がその解釈に疑問を投げかけていた。野菊や刺草で飾られた禍々しい中世の鉄の拘束具が、死者の頭に被せられていたのだ。これは何を意味するのだろうか?英国推理作家協会ゴールドダガー賞受賞作。
著者等紹介
成川裕子[ナリカワヒロコ]
1951年沖縄に生まれる。1975年香川大学経済学部卒業。英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いっくん
29
長編3作目。浴槽の濁った水の中には、冷たく硬直した体が…。前回読んだ時は、前2作に比べてミステリー部分がスッキリわかりやすい印象が強かったので、そこの記憶しか無かった。今回読んでみてこんなに重い話やったんやなぁと再認識。間に挟まるマチルダの日記で闇がどんどん広がってきて、最後の日記で爆発した感。油断してたら凹む。“交情というのは会話よりも、自分以外の人間がそこにいる事、その人間がどんなに自己中心的であろうとその存在がもたらす慰めに関係しているのかもしれない”ジャックとクーパーがせめてもの救いか(^_^*)2018/05/27
mejiro
15
スコウルズ・ブライドルという拘束具が衝撃だったが、内容はそれ以上に恐ろしく悲しい。亡くなった老婦人の担当だった女医は、奇妙な理由で事件に巻き込まれる。著者はどうやって機微を描くすべを身につけたのだろう。事件の様相が覆されたときの感覚が鮮やかでやみつきになる。様々な夫婦の形が描かれる中で、主人公と画家である夫の関係が印象的。負の連鎖を断ち切るのは並大抵のことではなく、多くの助力が必要で、つらい痛みを伴う。心を揺さぶられる物語だった。画家の絵を見たい。個性の強い登場人物の中で、脇役の刑事に安心感を覚えた。2018/10/15
みみずく
11
大金持ちの老婦人マチルダとその娘、孫娘、周囲の人間との関係。マチルダと主治医セアラ、その夫の画家ジャックとの関係。周囲の人を馬鹿にして底意地の悪いマチルダ…辛辣なユーモアを愛し、率直なマチルダ…その相手との相性によってどう印象が変わるのかということが丁寧に描かれていた。 ジャックと結婚以来ずっとセアラは夫の不貞を放置し、傷ついてもその傷をさらしたままジャックを、その才能を愛している。(続)2014/02/20
ネムル
9
読んでいてえらい疲れたが、共同体の陰湿な感じや連鎖する男尊女卑のなかで悶え苦しむ女性がよく描かれている。フーダニットとしてはわりとわかりやすいのではないかと思うが、別に欠点ではないかな(自殺か他殺か、犯人は誰かという問いへの迂遠な道行きが面白い)。2024/09/12
對馬 正晃
8
主人公夫妻のなんとも奇妙な愛の絆に感動しました!激しく拒絶し合っているようで、裏では互いにときめいているような関係って、所謂ツンデレですよね(笑)複雑で陰惨な血縁関係を軸に進められるストーリーの中で、一服の清涼剤のように感じられました☆2014/06/09