感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MICK KICHI
76
貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿と女流探偵小説家ハリエッド・ヴェインのコンビによる2作目。前作でとある事件で有罪、死刑判決の窮地から一転、ピーターの一目惚れからの大活動で救いだされたハリエッドは、またしても殺人の現場に遭遇する事になり、聞きつけたピーターが助太刀に参上する。 不可能犯罪の謎解きをしながら、彼女を手に入れたいピーターの悪戦苦闘と、ハリエッドの自立心からの本心とは裏腹な言動からくる微妙な会話の面白さが、知的好奇心と恋愛ドラマの稀有なマッチングを生んでいる。2019/11/03
セウテス
71
ピーター卿シリーズ第7弾。〔再読〕ピーターが結婚を申し込み続けている推理作家のハリエットは、旅行中に浜辺の岩礁で男の死体を発見する。身体は温かく出血が続いている死体は、たった今死んだばかりの様であったが、彼女が警察に連絡する間に潮が満ち波に流されてしまう。本作はデクスター氏のモース警部の様に、ピーターの推理が示されては否定され、また新たに推理しては間違いと解る事を繰り返す事だ。もう無いだろうという状態から、たった一つの事柄で大逆転させるとは素晴らしい。推理すべき謎が何処に在るのかさえ、気づけなかった良作。2017/12/21
Tetchy
32
岸壁で1人のロシア人が殺されている、このたった1つの事件について600ページ弱もの費やし、さらにだれる事なく、最後まで読ませたその手腕たるや、途轍もないものである。事件がシンプルなだけにその不可能性が高まり、今回ほど本当に真相解明できるのか、危ぶまれた事件はない。しかも最後の章でまたも驚きの一手を示してくれるサービスぶりはまさに拍手喝采ものである。ただ犯人の動機がよく解らなかった。読み落としたかな?今回は表紙の装画に非常に助けられた。この装画がなければ現場の状況を克明にイメージできなかっただろう。2009/07/22
ぽんすけ
28
ハリエット女史再登場。また殺人事件現場に出くわすとは。拒否ってるけど実はピーターと相性いいんじゃなかろうかw今回はロマノフ王朝と暗号問題とお決まりの遺産問題ですよ。しかも一番の証拠たる死体が無いときてる。そのせいで最初から自殺か他殺かで大分揺れるし、しかも容疑者たちのアリバイと死亡推定時間の問題でも一悶着。ピーターの推理もあちこちに飛びながら、一つ一つ無理なものを消去して積み重ねていく形で、これはこれで堅実で良かった。被害者のアレクシス、ちょっと夢想家のきらいはあるが悪い人じゃなかったので気の毒すぎた。2024/11/18
LUNE MER
27
再読なのだがほとんど内容を覚えておらず、ラスト数ページに差しかかったところで事件を混迷なものにしていた錯誤が何であったのかを不意に思い出した。このネタの割には少し大長編になり過ぎ?という印象。もっとも、セイヤーズはトリック云々ではなく物語を愉しむ方がしっくりくる読み方ではある。本作はウィムジィとハリエットの馴れ初めを綴る一編であり、隙を見ては求婚するウィムジィをハリエットがひたすら塩対応するプレ夫婦漫才が見どころ。2022/07/05