内容説明
丸顔の、いかにも美食家然とした風貌の蔭に、鋭い直感力を秘めた犯罪捜査部顧問レジー・フォーチュン―クロフツ、クリスティと同年にデビューを飾った巨匠H・C・ベイリーの生み出したこの名探偵は、ホームズ時代の古き良き香りを残しながら、社会に向ける眼差しに新しい時代を感じさせ、来るべき風潮を予知する先取の才能をも秘めていた。「聖なる泉」等、傑作七編を収録する。
著者等紹介
永井淳[ナガイジュン]
1935年生まれ。1957年埼玉大学英文科卒業。訳書多数。2009年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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セウテス
69
〔再読〕本格黄金時代、イギリス5大ミステリ作家の一人。残念な事に80以上の作品が在るのに、日本では僅かしか翻訳されていない。素人探偵レジナルド・フォーチュンが活躍する7つの短編集。本業は開業医でスコットランド・ヤードの顧問、ホームズ的な直感型で在りながら人間的な温かさが特徴。論理的に推理に挑戦出来る作品ではないが、「知られざる殺人者」「小さな家」のサスペンスはたいへん良い。何の関係も無いとしか思えない小さな事柄から、事件の謎に迫っていき、やがて隠された人間関係が見えてくる他の作品も、中々読み応えが在る。2017/04/10
Ribes triste
13
医師にして犯罪捜査部のアドバイザーであるレジナルド・フォーチュン氏が解く事件の数々。フォーチュン氏の人柄がおっとりほのぼのしている分、事件の様相がなかなかにエゲツなく感じる。もっと読んでみたいけれど、翻訳されていないとは(涙)。2022/01/10
歩月るな
13
1920年初登場のフォーチュン氏。主にレジナルドの愛称レジーと呼ばれる方が多い。レジーは医者ではあるが開業はしていない。事件に関わる内にヤードの顧問になるからだ。思考機械やソーンダイクの後輩的な初期設定も持つ。買い物を楽しむ奥さんを尻目に薄い下着を着せてやる事を想像するなどの妙な人間味の持ち主であり、妻帯するまでも描かれるあたり変人ぞろいの探偵役の中では稀有な存在だ。真実がどうであれ、読者に実害は無いのかも。ある事件では相変わらず『オセロー』のモチーフも登場。短編のみならず九つもある長編も読んでみたい。2017/10/18
ヨッシー
10
レジナルド・フォーチュン氏が主人公の短編集。ちなみに自分が読んだのは、便宜上登録はこちらにしていますが、もうひとつのほうです。しっかしなかなかおもしろかったですね。普通の人間感覚のフォーチュン氏は、今までの友達には欲しくない(笑)感じの探偵とは違い、あまりに普通。金持ち嫌いとか、必ずしも犯人裁かなくていいじゃんなど、様々に感情移入できます。作品の水準もなかなか。個人的には「小さな家」がベスト。ちなみに1920年代から発表されたくせに、なぜホームズのライヴァルなんだか誰か教えて下さい(笑)2010/07/30
山田
8
シャーロック・ホームズと比べて、推理の材料の後出し感を強く感じる。 1話完結の短編集なのですが、1話の中で種明かしが1〜2つあるのも後出しのような残念さの原因なのかも。2021/11/29