出版社内容情報
目撃者の前で、少年が開けた荒野から忽然と消えた人間消失事件と、密室殺人――スコットランドを舞台に、名探偵ウィリング博士が不可能犯罪に挑む謎解きの傑作。本邦初訳。
内容説明
家出を繰り返す少年が、開けた荒野の真ん中から消えた―ハイランド地方を訪れたダンバー大尉が聞かされたのは、そんな不可解な話だった。その夜、当の少年を偶然見つけたダンバーは、彼が何かを異様に恐れていることに気づく。そして二日後、少年の家庭教師が殺される―スコットランドを舞台に、名探偵ウィリング博士が人間消失と密室殺人が彩る事件に挑む傑作本格ミステリ。
著者等紹介
マクロイ,ヘレン[マクロイ,ヘレン] [McCloy,Helen]
アメリカの作家。1904年ニューヨークに生まれる。23年、フランスに渡りソルボンヌ大学に入学。在学中から美術評論家や新聞記者として文筆活動を始め、以降十年近くヨーロッパに滞在した。帰国後38年に長編『死の舞踏』で作家デビュー。同書で探偵役の精神科医ベイジル・ウィリング博士を創造する。46年に作家ブレット・ハリデイと結婚(61年に離婚)。50年には女性初のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)会長に就任。長年の功績を称えられ、90年にはMWAグランドマスター賞を受賞した。94年歿
駒月雅子[コマツキマサコ]
1962年生まれ。慶應義塾大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
155
ヘレン・マクロイの2作目です。最近彼女の作品が古いながらも見直されているようで徐々に人気が出ているようです。「幽霊の2/3」も楽しめましたがそれよりももっと印象に残りました。前半はゆっくりとした展開でしたが、後半はかなりのスピード感のあるもので最近の小説と比べても遜色ないと感じます。2016/03/21
🐾Yoko Omoto🐾
154
2015海外本ミス第1位作品。世界史に疎い私にも、この第二次世界大戦終結直後におけるスコットランドの時代背景を無理なく理解させてくれる丁寧な描写が有り難く、戦争が残した罪深い爪痕に語り尽くせぬ犠牲を強いられた人が世界中にいることを再認識させられる物語だった。人間消失や密室の謎は今作において装飾の一部程度ではあるが、終盤のウィリングの真相解明には感嘆の連続で、漏れのない伏線回収の素晴らしさも見事だった。そして全てが明かされた時に訪れるカタルシスには切実な哀しみが内包されている。絶賛に違わぬ本格ものの傑作。2015/01/15
夜間飛行
96
スコットランドを舞台に、失踪を繰り返す少年の謎をアメリカ軍人で精神科医の語り手とウィリング博士が解いていく。この土地では空を行く雲や、光の移ろいさえ謎めいている。また、終ったばかりの戦争も無気味な影を落としている。そういった地域や時代の特殊性が謎と融合し、プロットを形作っていく構成に魅せられた。作中、第二の殺人は(難しいトリックではないが)密室になっていて、なぜ密室でなければならないかという理由がちゃんと説明される。雑なミステリだとこのような点が等閑にされがちだが、この作品では細部まで丁寧に作られていた。2015/02/23
けい
93
第二次世界大戦、欧州戦線の終結直後のスコットランドを舞台に、家出を繰り返す少年に端を発した出来事を描く物語。当時のスコットランドの風景、スコットランドとイングランドの血塗られた歴史背景、欧州戦線終結当時の欧州の情勢などが簡潔かつ十分に語られ、すんなり頭の中で物語の背景を構築できる語りが見事です。そんな語りの最中にも、伏線がきっちり散りばめられており、終盤に背景を絡めながらの伏線回収は圧巻の一言。こんなすごい物に出会うとは・・。読友さんレビューに感謝です。2015/02/11
セウテス
78
【ウィリング博士】シリーズ第7弾。第2次世界大戦直後、スコットランドのハイランド地方が舞台。ダンバー大尉は、ドイツ人捕虜が1人脱走したのではないかとの調査に訪れる。宿泊先のコテージで、何度も家出を繰り返す少年ジョニーを保護したダンバーは、少年の家庭教師とジョニーが持っていた本の著者を疑う。その本の著者は、町外れに隠れる様に住んでいたのだ。やがて連続殺人が起こり、ダンバーはウィリング博士に連絡をとる。少年は何故、何度も家出を繰り返すのか。読み解ける伏線は良いのだが、似たトリックが他の作品にも多いのが残念だ。2022/04/15