内容説明
私立探偵ケントのもとを訪れた美容師の男は、誘拐された三歳になる愛娘の発見と救出を依頼した。手がかりはただひとつ、娘の生存を知らせるため一週間おきに犯人が送りつけてくる写真だけである。ケントは妻と異能の友人ジョッシュの力を借り、数葉の写真から犯人の所在を割り出そうとするが…。謎解きの妙味と冒険活劇の魅力を併せもつ、読み心地爽やかな英国ミステリの逸品。
著者等紹介
ランドン,クリストファー[ランドン,クリストファー] [Landon,Christopher Guy]
1911年イングランドのサリー州生まれ。ケンブリッジ大学のランシングカレッジとクレアカレッジで医学を学ぶ。1936年、ロンドン証券取引所の取引員となり、1949年まで籍をおく。第二次世界大戦ではリビア砂漠から中近東諸国にかけて陸軍の医療・補給部隊で活躍、少佐まで昇進する。軍を離れてからは複数の職業を経て、1953年、42歳でA Flag in the Cityを発表し作家デビュー。1961年歿
丸谷才一[マルヤサイイチ]
1925年8月生まれ。1950年、東京大学英文科卒業。2012年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Yoko
16
初出は1958年。トラディショナルな英国冒険小説である。ごく限られた手がかりからなされる推理、ピンチに次ぐピンチ、芯の強い女性の活躍、そして異能の大男ジョッシュの存在でスリルと爽快な気分を堪能。結末を冒頭に示し回想の体で語られる構成も良し。復刊も納得の作品。ジョッシュは某シリーズ作品のブッバにインテリ成分を足したような‥‥‥。大好きになりました。2015/11/14
Radwynn
13
読了後の最初の感想は、只ひと言、「楽しい!」何とも言えない楽しい気分。楽しかった、ではない、楽しさが読了後にも余韻を残している、そんな気分。私立探偵ハリーの元に持ち込まれた数枚の写真、そこに写っているのは誘拐された幼子と、庭の光と影—そしてハリーたちは国境を跨いだ犯罪と対峙する事になる…のだけど、ちっとも暗くも重くもないのです。とっても上品な冒険物語。古き良き欧州映画か宮崎駿アニメが似合いそうな、とでも言えばよいのでしょうか。推理を期待すると肩透かしですが、私はこの作品、お気に入りにランクイン。2014/11/13
🐾ドライ🐾
11
帯に“名著復活”。その文言の強さに居住まいを正すように読み始めたわけだが、冒険脱出がメインとなる中盤以降は勢いに乗って読むことになる。展開はかなり雑だけれど。小学生の頃、怪人二十面相が登場する明智小五郎シリーズを読んだ当時の気持ちを思い出す。少年の心を何処かに置き忘れ、濁って淀んだおっさんには、“名著”と呼ぶにはちと厳しいかな。2020/08/24
Brooklyn0320
9
予備知識もなく、タイトルに何となく惹かれたのと、大好きな探偵ものということで読んでみました。ただ、本格推理小説というよりは冒険小説といった内容で、ちょっとがっかり・・・。自分の嗜好に合いませんが、丹精な作りで趣味の良い作品という印象は受けました。登場人物が少なく、どこかこじんまりした構成ですが、精緻な描写が臨場感をあおって、なかなかスリリングです。写真に写っている少女の影から監禁場所の緯度を割り出すなど、ロジックに滋味があるだけに、「もし謎解きの要素を強めに仕上げていれば・・・」などと思ってしまいます。2014/08/26
慧の本箱
8
なんともレトロな気分になる冒険小説。この私立探偵、愛妻と共に事件解明に乗り出し結構スリリングな展開をもみせて楽しませてくれます。2015/11/26