内容説明
都内の高校に通う佐島ルイは学校にも家の中にも漠然とした居心地の悪さを感じていた。心を落ち着かせられるのは真夜中の歩道橋だけ。そこで、同じ学校に転校してきた卯木リョウマと出会う。彼と話している時は不思議と息苦しさが和らいだ。多分彼も同じ息苦しさを感じていたから。「俺はさ、《世界の最深部》を見てみたいんだ」彼が語る言葉はすっとルイの心に入ってくる。このまま二人でいれるなら、灰色のつまんない世界も捨てたもんじゃない、そう思えた。でもそれは、ある日リョウマが拾ってきた拳銃が一変させる。「ねえ、リョウマ。一緒に《世界の最新部》を探しにいこっか」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
29
通学する都内の高校や家の中にも漠然とした居心地の悪さを感じていた少女・佐島ルイ。そんな彼女が同じ高校に転校してきた卯木リョウマと出会う青春小説。同じ息苦しさを感じていた彼と一緒にいると、不思議と息苦しさが和らぐルイ。このまま二人でいれるなら、灰色のつまんない世界も捨てたもんじゃない、そう思えた日々を一変させてしまうリョウマが拾ってきたモノ。激変する状況に世界の最深部を探しに行く二人の逃避行、彼女を救うためにリョウマが下した決断、そして淡々と綴られてゆくエピローグの先にあったその結末には救われる思いでした。2022/12/28
真白優樹
9
世界全てに対する居心地の悪さから灰色の日々を過ごしていた少女が、似た者同士な少年と出会い始まる物語。―――深き中心、その中で見つけた色の意味は。 何気なく出会い、気が付けば特別となる中で転がり込んできた銃が日常を壊していく物語であり、世界に追われ振り回されながらも、みっともなくとも藻掻き生きていく、等身大の蒼さが溢れる歌のような物語である。どうやら少しだけ、奇跡はあるらしい。期せずして導かれるように、またつながった二人は幸せになれるのか。きっとその色がある限り大丈夫。 うん、面白かった。2022/12/30
みやしん
8
最終的にはハッピーエンドっぽくなり悪者(作中最大の被害者)も征伐されて万々歳なんだけど、もっとボニー&クライドな逃避行を期待していた。空虚な家族像や事なかれ学校側など十代もしくはかつて十代だった層狙い撃ちな、思春期にわかった気になれる社会の空気。読了後に原作者に初めて気づき、なるほど本作は80年代角川映画及び、まだ「ライトノベル」なる分野が出来ていなかった時代の同文庫へのアンチテーゼなのかと思いけり。2023/01/06
サウナ探偵
7
おっさんホイホイ2000年代ジュブナイル臭を令和ワードで覆い隠してZ世代向けに焼き直した青春逃避行モノ。 ただ俯瞰して見ると、バカな高校生がヤクザの銃を理由もなく盗んで追われるだけという因果応報。 感情移入のしようがなくバカだなぁで終わった。2023/04/21
史
5
その心模様や二人の関係性は今の時代らしさがあり、母親世代の話を子どもたちが語るってのも結構好きですね。けども、メイン以外が昭和!(正確には90年代前半か) と言いたくなるようなストーリー。野島伸司ほど破滅的なものはないけれども、でもやっぱり令和舞台では色々と無理があると思ってしまう。地方舞台ならともかく東京ではファンタジー過ぎる。流行りの楽曲系小説だとは思うのだけれども、なんでしょうかね、昭和な世界を知らない読者なら新しいタイプとして楽しめるのかもしれない。2023/03/07