内容説明
不動産会社が盗難に遭った。が、盗まれたのは賃貸契約書のファイルのみ。やがて、同社の貸家の一軒から、胴体だけの女性の死体が発見された。身元を示すものは皆無。いったい誰が、誰に殺されたのか?わずかな手掛かりに基づくフェローズ署長の推理は、次々と反証に崩されていく。行き詰まる捜査陣が、試行錯誤の果てに掴んだ決め手とは?フェローズ署長最初の事件、新訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
64
〔再読〕フェローズ署長シリーズ第1弾。架空の町ストックフォードの警察署長と刑事達の、忍耐強く地道な捜査と並外れた推理力をフル活動して謎を解く警察小説。ハヤカワPBが絶版になってから数十年、やっと再発刊されました。発表当時は物語りの事件が、実際のカレンダーそのままの日程で展開するという、謎解きを現実的に楽しめる作品でした。発見された胴体だけの女性遺体、この女性はいったい誰なのか。本作は事件も展開も文章も、翻訳本とは思えない程シンプルなのが特徴です。何故か手が放せなくなり、読み終えておーっとなる事間違いなし。2016/08/21
*maru*
43
著者5冊目。『事件当夜は雨』は読了済だが、こちらがフレッド・C・フェローズ署長シリーズの第1作目。賃貸契約書の盗難とバラバラ殺人事件。被害者の身元もなかなか特定されず、警察の捜査も空振り続き。相変わらず地道という言葉がよく似合う作品だ。Nシステムなんてものもなく科学捜査の技術など捜査方法も限られていたこの時代、フェローズのような立場の人達は大変だったのだろうな…と、ちょっと同情してみたり。ヒラリー・ウォーの作品はこの地味で地道な捜査が魅力的なわけだが、“味がある”結末も見所だ。本書のラストも良かった。2018/05/25
yucchi
36
フェローズ署長シリーズ。他のヒラリー・ウォーの作品同様、無駄のない文章で事件が淡々と語られる。ある貸家から胴体だけの女性の死体が発見された。数少ない手がかりから推理し行き詰まりの繰り返し。部下のウィルクスが結構辛口で、フェローズ署長の推理もことごとく却下されてしまうのだがめげない署長。そのためようやく犯人へとたどり着いた時には思わず「フェローズ頑張った!」と労いたくなる(笑) 未訳のフェローズ署長シリーズもぜひお願いします創元さん(人>ω•*)2017/05/20
星落秋風五丈原
34
署長がせっかくあれこれと推理を巡らせても、しっかり者の部下シドに「成層圏にも飛びだしかねない実験的推理」と揶揄される。 「短期間で部屋を借りる行動がおかしい」事を表現するために「エスキモーに氷の彫刻をさせるようなものだ」という比喩を用いて、部下に軽くスル―される場面もある。何度却下されても「成層圏ものの実験的推理」を部下に披露し酷い事を言われても部下苛めに走らず、そして「被害者の死を伝えるのは必ず自分がやる」と決めて一人で被害者宅を訪れる署長は、いかにも現場叩き上げの風情が漂う苦労人で、愛すべき人物だ。2015/05/11
tom
29
ヒラリー・ウォーの3冊目。この本も、地道な警察活動の物語。主人公は、ああでもない、こうでもないと考えながら、コツコツと捜査を進める。このスタイルが、現実の警察活動ですよねと思わせるリアリティ。読んでいて楽しく、どこに進むのかとシンプルな喜び。そして、ここに来ますかという結論。素朴だけど、原点にあるような警察小説。好きだなあ、この素朴さ。2020/10/26
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- 和書
- 生体機能関連化学実験法