内容説明
英国が誇る秘密情報部。なかでもダブル零のコードをもつのは、どんな状況をも冷静に切り抜ける腕ききばかり。党の資金を使い込んだソ連の大物工作員が、カジノの勝負で一挙に穴埋めをはかるつもりらしい。それを阻止すべく、カジノ・ロワイヤルに送り込まれたジェームズ・ボンド。華麗なカジノを舞台に、息詰まる勝負の裏で、密かにめぐらされる陰謀。007ジェームズ・ボンド登場。
著者等紹介
井上一夫[イノウエカズオ]
1923年4月生まれ。1947年、慶應義塾大学哲学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
322
先日、ル・カレの『ティンカー、テイラー…』を読んだばかりなので、その落差に驚く。これらの両作品が同じ国のスパイ小説として並立しているところが、イギリス文壇の懐の深さか。それにしても、彼我の違いは大きい。20年の違い(こちらが先行)なのか、作家的資質の違いなのか。ル・カレの地道さに比べると、こちらはB級映画のようだ。カジノでのバカラ勝負。美女との恋。そして、ボンドのいかにもなマチスモ。さらには、これまたいかにも感傷的な幕切れ。ただ、いささか意外だったのはボンドが八面六臂の冒険活劇を演じなかったところか。2016/10/08
absinthe
188
面白かった!007第1作。スパイ小説の基本中の基本。設定は荒唐無稽だがなぜか妙に説得されてしまい気にならない。ボンドの性格もまだ模索中なのか結婚を意識するなど後のボンド像とやや異なる。自分のしているスパイ業が全なのか悪なのか悩むボンドの姿も興味深い。小説はカジノの場面は前半だったんだね。ヴェスパーも魅力的。今風のタイトルで表すと『悪党を破産させるためカジノに行けと命じられた公務員なんだが。高級カジノで同伴の美女と税金で豪遊してきた件w』2021/12/17
ケイ
130
007ジェイムス・ボンドが登場するシリーズ第1作目。表紙から想像されるヨーロッパのカジノロワイヤルという雰囲気がいい。ラスベガスともドストエフスキーの描く賭博とも違ってどこまでも優雅だ。かかわる人の心の奥には黒いものが渦巻いてるのだとしても。バカラの説明が分かりやすくドキドキしながら読む。ロシアのスパイに対し、アメリカとフランスがボンドに協力して立ち向かうのだが、関わり方もおしゃれだった。ボンドの女性に対する態度が疑問符だが、ラストの冷徹さにスパイの非情さを見る。2016/03/26
扉のこちら側
97
2017年182冊め。【298/G1000】実は映画も見たことがない。小説はこれはシリーズ1作めらしいが、さすが1953年発行ということで話に効くものと受ける印象が違う。猛スピードでの運転で土煙が経つとかね。あとがきでもある通り、ここからファンのボンド像が投影されてよりキャラが経ち華麗な活躍になっていくのだろう。2017/02/22
セウテス
62
007シリーズ第1弾。ジェームズ・ボンドのデビュー作です。本作ではまだ、ボンドはあの飛び抜けた超人的な特徴もない、一介の人間味のある公務員として描かれています。ソビエトの大物工作員が自国の資金に手をつけ、損失を埋めるためカジノで挽回を計ろうとします。それを阻止するべくボンドは送り込まれ、カジノ勝負で勝つ事を命じられます。本作はボンドが、映画の様な姿に変わっていく過程を書いているとも言えます。00ナンバーの重みに苦しみ、苦悩する姿には惹かれます。ラストのクライマックスは衝撃、涙を流さずにはいられません。2015/12/13