出版社内容情報
ウィリアム・アイリッシュ［ウィリアムアイリッシュ］
著・文・その他
宇野利泰［ウノトシヤス］
翻訳
内容説明
事故で昏倒したことがきっかけで、記憶喪失から回復したタウンゼンド。しかし、彼の中では三年半の歳月が空白になっていた。この年月、自分は何をしてきたのか？不安にかられる彼の前に現れた、瑪瑙のような冷たい目をした謎の男。命の危険を感じ取った彼の、失われた過去をたどる闘いが始まった。追われる人間の孤独と寂寥を描かせては並ぶ者のない、サスペンスの名手の真骨頂。
著者等紹介
アイリッシュ，ウィリアム［アイリッシュ，ウィリアム］ ［Ｉｒｉｓｈ，Ｗｉｌｌｉａｍ］
１９０３年、アメリカのニューヨーク生まれ。１９２６年、普通小説Ｃｏｖｅｒ Ｃｈａｒｇｅでデビュー。主にコーネル・ウールリッチという名前で創作活動を行い、１９４０年以降次々とすぐれたミステリを発表、サスペンスの第一人者となった。１９６８年没
宇野利泰［ウノトシヤス］
１９０９年東京生まれ。１９３２年東大文学部卒業（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ～ 1件／全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人００９
145
名作「幻の女」で有名なウィリアム・アイリッシュ別名コーネル・ウールリッチのブラック・シリーズの一作です。本書は１９４１年の作品で今から８０年近くも前の本なのに名作は永遠に色褪せないですね。３年前に謎の失踪を遂げた男が記憶喪失により心が空白のままで妻の元へと帰って来る。やがて男は迫り来る追跡者から逃げ回りながら、過去の記憶を探して見知らぬ街へと旅立つのだった。著者の魅力はこの強烈なスリルとサスペンスで運に見放された男が反撃して己に着せられた殺人の濡れ衣を晴らし真の悪党を追い詰める活躍が天晴で感涙しましたね。2020/01/06
アナーキー靴下
73
記憶喪失と物言えぬ老人…子供の頃読んだアイリッシュは『あかつきの追跡』より本作児童書版の方が印象深い。巻末ノートの「アイリッシュの書くような作品は純粋な推理小説とは言いがたい」は同感で、推理小説的なフェアな展開を推進力としているだけで、主題はそこにないように思う。都会的で洗練され、知性と高潔さを備え、溢れるばかりの自由を謳歌する青年。それは絶えず孤独と背中合わせで、自律的に生きることを意味する。割を食わされたルスの結末はご都合主義にも似るが、彼女との別れのためにこの一冊があったようにさえ見える鮮やかさだ。2023/07/06
Tetchy
25
アイリッシュならではのサスペンス溢れる導入部！今回は叙情性よりもスピード感を重視した構成で、アイリッシュ特有の短編を連ねたような追撃劇、殺人劇は成りを潜め、謎の究明に着実に一歩一歩前進していく。だから200ページ足らずの長編にしては話の起伏は濃いのだ。裏に隠れた事件についてはアイリッシュらしからぬトリックの施されたもので、ちょっと驚いた。しかし縺れた糸を1本1本振り解いていくような筆致はサスペンスの王様の面目躍如といったところで緊張感が持続してよかった。が、しかし重要な謎の解明が忘れ去られているぢゃないか2009/09/05
駄目男
13
帯に「名著復活」なんて書いてあると、つい買ってしまう。 いつの本かと奥付を見れば初版が1960年2月10日とある。これまた随分古いものだが、本当に名著なのかどうか御覧じあれと謂わんばかりに試される吾みたいなものか。少しばかり強引なところもあったがまあいい。然し、ラストのトリックはあまり頂けないな。60年前の名著が今も輝きを放っているとは限らない。主人公が記憶を失って、その間、殺人を犯していた。過去の本当の自分を追い求めるのは、何も目新しい手法でもないからして、別に唸るほどの本でもなかったが。 2020/04/25
elf51@禅-NEKOMETAL
11
中編といってもよく200ページ程度。記憶喪失になった男が過去を探しつつ，自分が殺人者だと知り，さらに謎を探るという。今では結構見られる設定だが，なんせ80年前，当時としてはかなり面白く，めずらしい設定だったに違いない。記憶が無いという不安と焦燥と，誰かに追われているという強迫観念，このあたりが絶妙に書かれる。やはり女が絡んできて，ロマンチックな展開に。謎に女はつきものである。最後のトリックは強引であるが，まぁ，アイリッシュの作品に本格トリックは添え物だろう。2020/12/25
